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学歴だけでは職務遂行能力を測れない……。となると、どんな基準で人材を採用すればよいのだろう。多くの人事担当者が頭を悩ませる永遠のテーマに、とある日本の伝統的な企業が果敢に切り込んだことがある。採用の“大改革”をおこなった結果、どんな顛末が待っていたのか。※本稿は、勅使川原真衣『学歴社会は誰のため』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

学歴だけでは
職務遂行能力を測れない

「万能」で「優秀」な個人が、必ずしも「有能」な組織を生むのではありません。だとしたら、私たちが知るべきは、「誰が『高い能力』をもっているのか?」「人のどこの何を見ればその『能力』の高さがわかるのか?」などではないでしょう。職務遂行能力のような、わかるようなわからないものを誰がどのくらいもっているか?を効率的にはじき出そうとすると学歴をありがたがってしまうことになるからです。

 それによって日本の「働くということ」がよりよくなっているのならまだしも、現実は前途多難です。「ジョブ」が不明なまま新卒一括採用をメンバーシップ型雇用の形で行なう従来のやり方に適応した、人の見極め術の議論を続けている場合ではないのです。

 現状の雇用慣習を所与のものとして、そこに都合のいい情報――学歴――でわかるのは、せいぜい職務(ジョブ)不明を前提とした職務遂行能力くらいなものです。なんとなく「うまくやりそう」かどうかを知って、結果的に「採用ミス」だったとか、「配属ガチャ」で最悪だとか、双方の立場から文句を言うことはいとも簡単です。