「あいつは変わっている」「問題がある奴だ」と部下を評するリーダーがいる。だが、組織が抱えるこのような「問題」は、従業員個人の能力の問題ではなく、個人と組織の相性の問題であると組織開発専門家の筆者は指摘する。目標達成に向けて改革を行うために、組織が重ねるべきディスカッションの極意を説く。本稿は、勅使川原真衣『働くということ 「能力主義」を超えて』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
「問題なんです」という訴えは
果たして本当に「問題」なのか?
私は教育社会学という、学校をはじめとする社会システムをあえて疑ってみる学問を学んできました。そのせいか、基本的に人々が「問題なんです!」と言うことが本当に問題なのか、常に疑っています。「問題」は往々にして、「設定」されるものだと経験的・学問的に知っているためであって、ただ性根が曲がっているわけではないと思っていますが、どうでしょう。
ですので、私の場合、ご相談をいただく際には、「これこれが問題なんです」との訴えそのものに聞き入るというより、何を問題だと当人が「語っている」のか?に神経を集中させます。
「猫の手も借りたいとはいえ、あいつは『変わってて』使いにくいんだよなぁ」
「あいつ個人は抜群に『優秀』なんですがねぇ、いかんせん○○本部長とは水と油で、部内の雰囲気を悪くしてるんです」
「『いい人』ほど辞めちゃうんですよねぇ。ややこしい奴らが集まって、ひーこら言いながらやってますよ」
個人の能力の問題に
矮小化していないか?
これらの嘆きに対して、「結局部長のリーダーシップの問題が~」「評価制度をてこ入れしないと~」「採用精度の問題ですよ、求人掲載プランをアップグレードしたほうが~」などと言っている場合ではないということです。真にどうにかして力になりたい、現状を変えたいのであれば、愛と少しばかりの勇気を持って、次のようなことを卒直に問うべきではないでしょうか。