学歴不問にしたのち、さらに、大なたを振るったと言うべきかな。これまではうちの社風に合いそうな、ゴリゴリのリーダーシップというより、協調性のありそうな柔和なタイプを積極的に採用してきました。勅使川原さんも感じますよね?うちにいそう、って感じ。その新卒採用の基準をガラリと変えました。
具体的にはある適性検査を使って、そこで『積極型』や『活動型』という指標が高い人は車のアクセル・ブレーキで言うアクセルですから、いまこそ突破口を見出したい我々としては、彼ら・彼女らこそが望ましい人材であると食いついたわけです。役員も乗り気で。まぁ当時の事業環境からして、『変革人材』に託す向きというのはすでにあったので、すんなり満場一致で決まったんです」
「尖った」新卒採用者は
その後活躍できたのか
さて、その1年後。衝撃的なことに、その「尖った」新卒採用者たちは、2年目に入る前に3割が退職したと言います。全社の離職率は1%に満たないというのにです(それもびっくりですが、そういうJTCは本当にあります)。
「尖りだ尖りだ、と聞いて入ったが、社内で何を言っても煙たがられ、意見は無視され、多くの既存社員にとって眼の上のたんこぶになったと。変革を期待されたその新卒入社たちは口をそろえて『時間の無駄』と言って去っていきましたよ。そのあと第2新卒でいいところに転職できたみたいです」
衝撃の告白を受け、私の口は3秒くらい開いたままだったと思います。
さぁさ、敗因を分析しましょう。まずもって違和感があるのが、仕事の実態は、人と人や、人とタスクとの組み合わせでなんとか回っているのに、人の能力・資質が仕事を動かしていると思い込んだままの点です。このA社は脱・能力主義を掲げていたはずなのに、です。それくらい、「変革」とか「革新」という言葉には並々ならぬ引力があることを感じさせるエピソードでもあります。