――その力はどうやって鍛えればいいのでしょうか。
大崎 一つはスマホやパソコンから離れることではないでしょうか。みな頭でっかちになってしまって、経験不足、体験不足なんです。本を読んだり、映画やアート作品を見たり、旅に出たり、土や風のにおいをかいだりすることが大事だと思います。
スマホやパソコンに依存しすぎるから、どこかから借りてきたような言葉、聞いたことがあるような話しかできなくなる。それは自分の言葉ではありません。
特に若い世代の人はそれではいけないし、もったいないと思います。もっといろんな体験をしたほうがいい。そうやって生成AIにはない「感じる」力、感覚を磨いていくことが大切ではないでしょうか。
自然、他者、そしてアート
すべては“自分と向き合う”ための鏡
――答えが容易に見つからない不確実性の時代において、そうした「感じる」力が企業経営にも求められ、感性を磨くための一つとしてアート作品と向き合う経営者もいます。
大崎 アートに限らず、自然と向き合う、人と向き合うということでもいいのですが、何かと向き合うというのは、月並みですけど、自分自身と向き合うということだと思います。鏡の中の自分と向き合い、そこで何を感じるのか。
経営も同じだと思います。18世紀の思想家、フリードリヒ・フォン・シラーの有名な言葉に「強者は最も素晴らしく孤独である」というのがありますが、経営者もときには誰にも相談できず、自分と向き合って最終的な決断をくださなければならないことがあります。
私自身、経営判断においてアート作品と向き合ってよかったという直接的な経験はないですけれど、アート作品を見て、自分自身でいろんな問いをつくることがあります。その積み重ねの結果として、私が経営判断をするときにアートの力が多少なりとも影響したということはあると思います。
その意味では、日常にアート作品と触れ合う機会をつくること、自分の好きなアート作品を身近なところ置いておくというのは大事なことだと思います。