松本幸四郎・歌舞伎俳優Photo by Shogo Murakami 衣装協力=イザイア/ISAIA Napoli 東京ミッドタウン メイク協力=ラ・メール

チームメンバーの意見に耳を傾け
見出した「若い才能」

――チームを構成する上で、「適材適所」の人事も重要になります。7月の歌舞伎で上演した「鬼平犯科帳」では、市川團十郎さんや團十郎さんの長女・市川ぼたんさんといった、外部のスペシャリストを客演として迎えられています。彼らの起用には、どのような狙いがあったのでしょうか。

幸四郎:今回の舞台で團十郎さんが演じる役は、まさに彼のために創った役です。非常に悪い人物ですが、彼が演じることで、ただの悪役ではない、深みと魅力を持ったキャラクターになると確信していました。

 また、少女のおまさ役については、実は息子の染五郎から「ぼたんさんしかいない」と名前が挙がったのです。彼女の持つ、小刀のような鋭さと、芯の通った大きな声。この役にぴったりだと思いました。

――チームメンバーの意見にも耳を傾け、若手の才能も見いだされているのですね。そして、この舞台ではお父様の松本白鸚さん、幸四郎さんご自身、ご長男の市川染五郎さんという三代が、それぞれ異なる時代の平蔵とその父を演じられます。これは究極のチームとも言えますが、どのような相乗効果を期待されていますか。

幸四郎:まさに「実際の親子だからこそ成立する場面」を創りました。舞台の上で、リアルな親子関係と、芝居としての虚構が交錯する。それが見ている方にとって、「これはリアルなのか、それとも芝居なのか」という、不思議な感覚を生み出すのではないかと思います。

 血のつながりが、セリフや演技を超えた特別なリアリティーや緊張感を生み出す。それこそが、三代で共演する最大の価値だと考えています。プライベートな関係性を隠すのではなく、むしろそれを逆手にとって、作品の深みに変えていく。それもまた、一つの挑戦でした。