「無言のリーダーシップ」とは?
「無言のリーダーシップ」とは、リーダーが何もしない「放任」や「無関心」を推奨するものでは決してない。リーダーが指示や激励をしなくても、部下が自ら成果を上げられる仕組みが構築された状態を指す。
組織にはコミュニケーション不足による失敗例が山ほどあるので、「部下との会話やコミュニケーションを減らしたら、チームの雰囲気が悪くなるのでは?」という指摘は極めて適切だ。
誤解がないように言っておくと、日々の雑談や休憩中などは「無言のリーダーシップ」の範疇(はんちゅう)ではない。あくまでも、「リーダーという役割のもと、目標達成のためにチームや部下に発する言葉」を指す。そういった「言葉」を減らしても回る仕組みをつくることで、具体的には次のようなメリットがある。
・ミスコミュニケーションが減る
私の経験では、口頭による指示や説明が増えると、伝える側と受け取る側で認識の相違が生じやすくなる。「毎回言っていることが違う」「あの人は気分屋だ」などと手厳しい評価を受けているリーダーは、言葉数がやたらと多い傾向にある。
リーダーの言葉が多いほど、チーム内の混乱を招きやすいのだ。リーダーが発する言葉を最小限にして仕組みでチームを回すことで、ミスコミュニケーションのリスクを減らすことができる。
・リーダーの負担が減り、戦略的な仕事に集中できる
現場オペレーションへの細かい口出しから解放されれば、リーダーは本来の仕事に集中できる。リーダーの本来の仕事は、チームの戦略立案や未来のビジョンづくりなどだ。これらの戦略的な仕事に時間を使わずに、マネージャーとしてキャリアアップしていくことは難しい。
・部下の自走を促す
私が現場で見てきた限り、言葉によるその場限りの指示が多いと、部下は「覚えずに聞いて実行するだけ」の指示待ちマシーンになってしまう。
よくあるのが、「やりながら、わからないことがあったら聞いて」という指導方法だ。一見、面倒見の良い親切な上司に映るが、実際のところは、知識を言語化・体系化することを後回しにしているだけのパターンが多い。
一方、マニュアルやFAQ(よくある質問)ドキュメントなどの仕組みを構築し、ある程度、体系化された知識を先に伝達しておけば、部下が自分で考えて行動する機会が増える。