「無言のリーダーシップ」は、基本的にメリットばかりだ。ただし、「無言のリーダーシップ」が完成するまでは、残念ながら「無言」ではいられない。メンバーとの対話やコーチング、マイクロマネジメントといった密なコミュニケーションが必要になる。

「無言」になるためには、最初は言葉を尽くさなければならないのだ。

「無言のリーダーシップ」を実現する4ステップ

 読者のみなさんが確実に「無言のリーダーシップ」に到達できるよう、次の4ステップを紹介する。

(1)準備:信頼と合意を築くマインドセット
(2)問題解決:目標達成を阻む壁を取り除く
(3)仕組み化:成功をくり返す、失敗をくり返さない
(4)付加価値:仕組みから付加価値を生み出す

(1)準備:信頼と合意を築くマインドセット

「無言のリーダーシップ」を成功させるには、まずは部下との信頼関係を築く必要がある。そのためには、共感と共鳴、言葉の定義の統一といったコミュニケーションが必須だ。また、仕組みを構築するにあたって、「人間はそもそも完璧ではなく弱い存在である」という性弱説の考え方を身につける必要がある。

“弱い”からこそ、最初は打算的合意でもいいから、メンバーが目標にコミットしていく仕組みを設ける。すると、やがて本当の信頼が芽生える─この逆説を理解することが「無言のリーダーシップ」への第一歩となる。

(2)問題解決:目標達成を阻む壁を取り除く

 問題解決とは、現状を正確に把握して、問題を特定することから始まる。「構えて、打って、狙って」では球は当たらない。意味のある仕組みを構築するために、まずはチームの問題を正確に突き止めることに時間を使おう。

 この段階では、マイクロマネジメントが必要になることもある。密なコミュニケーションによって、「できない部下」の要因や、それぞれの部下の意欲と能力を正確に把握する必要があるからだ。しかし、ここで問題を解決しておくことで、「無言のリーダーシップ」をつくる土壌が完成する。

(3)仕組み化:成功をくり返す、失敗をくり返さない

 部下との信頼関係を構築し、問題を解決することができれば、いよいよチームの仕組み化が始まる。「無言のリーダーシップ」を成功させるためには、仕組みをつくる段階から部下を巻き込み、部下が自分たちで仕組みを改善していけるようになる必要がある。仕組みを改善する仕組みができれば、リーダーが無言でも自走するチームが出来上がる。