まずは、どれだけの「深さ」「正直さ」の回答をリーダーが求めているのかが部下に伝わるよう、私の経験では、リーダーから自己開示することが望ましい。
部下の仕事の価値観を引き出すために有効な内容としては、「どんな仕事にやりがいを感じるのか」「どんな仕事が辛いか、嫌か」「人生において仕事の優先順位は高いか低いか」「今後やっていきたい仕事はあるか」などが挙げられる。リーダーがこれらの話題について自己開示したあとに、同じ話題を投げかけてみるのだ。
このとき、部下からどのような答えが返ってきても、内容自体は問題ではない。むしろ、「特にやりたいこともなくて、なんとなく入社してしまったんです……」といった本音を引き出すことが重要だ。
部下の本音を知っておけば、後の「問題解決」や「仕組み化」をよりクリティカルに行える。また、本音を話すことができた部下は、「あの人は自分を理解してくれている」という前提で、リーダーの指示やアドバイスを受け取ることになる。
(2)「沈黙」の時間をつくる

ヒアリングが軌道に乗ってきたら、あえて「沈黙」の時間をつくるとよいだろう。大体3秒くらいの沈黙だ。「嫌なこと」や「苦手なこと」など、部下がリーダーに話しにくい話題ほど、沈黙の時間が有効である。人は「沈黙を避けようとする」心理メカニズムがあるからだ。
これまであった音が急に消えると、人は怖くなってしまう。沈黙が怖くてどうするかというと、「沈黙」をかき消すように話し始める。それまでは理路整然と質問に答えるだけだった部下も、「これあんまり言ってなかったんですけど……」「実は不安なことがあって……」と脳内で整理されていない本音が出てきやすくなる。
(3)部下に「共感」か「共鳴」をする
部下が本音を話してくれたら、「共感」を示す。「そうなんだ」「それは大変だったね」「話してくれてありがとう」といった具合だ。同じ経験をしたことがあれば「共鳴」することもできるだろう。
この3つのポイントをおさえたヒアリングをすれば、後の「問題解決」や「仕組み化」が上滑りして形骸化することを防止できる。もちろん、信頼関係の構築は、仕事の価値観を聞くだけで完成するものではないが、そのための一手として、マネジメント初期に部下へのヒアリングの機会を設けることは非常に効果的だ。