気の持ちようだけで
パフォーマンスが激変

 以前、空手のジュニアチームを指導したことがあります。「精神的指導もお願いします」とコーチから依頼されて、坂道ダッシュを30本させました。

 チャンピオンを何人も輩出している強豪チームなので、ダッシュ10本なら余裕。そこで、普段の3倍ダッシュさせました。個々の精神的弱さが見たかったのです。

 私の目論見通り、最初は快調にダッシュしていた子どもたちは、だんだんヘトヘトになりました。しかし「ラスト2本!」となると、急にみんな元気に走りました。

 そこで私が「10本追加!」と言ったんですね。するとほとんどの子は「えーっ!」と不満を漏らした。しかしチームの中でダントツの戦績を持っていたO君は、「しゃーねーな」と瞬間的に切り替えて、さっさと走り始めました。

 そればかりか周りのみんなに「おまえら、1本から数えるんじゃなくてさ、10本、9本、8本って数えて走ろうぜ」と提案したのです。この発想が出てきて、さらに周りに呼びかけるあたりが、圧倒的な強さのゆえんなんです。

 後にO君からは、「全日本大会の決勝で延長戦になったとき、『あと10本!』って和尚様に言われたダッシュを思い出して頑張れました」という手紙が届きました。

 人生では、「あと10本!」みたいな想定外のことが一番疲れたときに起きます。

 そんなときに「よっしゃ!」で切り替え、前を向けることが本当の強さなのです。