「子どもに任せておいたら時間がかかるから」と、さっさと大人が決めて、進めてしまってはいないでしょうか。もちろん、どうしても時間が許さないこともあるかもしれません。

 しかし、すべてをお父さんお母さんが決めているということは、子どもが自己決定する練習を積めていないということ。小さな自己決定で練習をしていないのに、突然、進路や就職など大きな自己決定にさらされる。今の社会にはそうした若者たちがたくさんいます。

 深村先生は「辛抱の時間」と表現していますが、「待つ」ことは教育のプロでも難しい。大人がどんどん教え込んでしまう方がずっとラクだったりします。

 社会的に「スピード」や「効率性」にばかり重きが置かれますが、成長や学びは「ゆっくり」であり、「不効率」の連続でもあります。最短距離を走らせることで、学びを奪っているともいえます。

 ときには、「ちょっとした失敗ならばアリ」と割り切って、見守る時間も大事にする必要がありそうです。

日常の何気ない声かけが
子供の成長を妨げている

 渋幕では各授業においても、積極的に失敗させる重要性が染み込んでいます。

 渋幕の教育活動の特色のひとつとして、理科の実験の多さが挙げられます。化学を担当する岩田久道先生は、「実験において失敗はつきものです。生徒の中には、自分たちが何で失敗したのか分析してレポートを書いてくる子もいます。これは非常に価値があります。なぜならば、インターネット上には載っていないことだから。自分で失敗のゆえんを考えて、分析するしかありません。大いに失敗して、そこから学んでほしい。これが頭を使うことだと思うのです」とその意義を語ります。

 生きていれば失敗することもたくさんある。それを授業の中で体験することも重要だ、と岩田先生は続けます。

「失敗から学ぶ」、これはお父さんお母さんも何度となく聞いた言葉だと思います。しかし、子育てにおいて体現することは案外難しい。

 例えば、ご家庭でお子さんが忘れ物をしていないか不安になったときに、「あれ持った?」「これは?」とチェックをしていませんか?先回りしてしまいたい気持ちをグッとこらえて、まずは「明日は何があるの?」と考えさせる質問をしてみる。

 そうすることで、少しずつ考える主導権を子どもに渡していきましょう。