また、子どもに選択肢を与えてみてもいいかもしれません。

「旅行先は海がいいか、山がいいか」
「図書館の中で、今日はどの本を借りる?」

 そういった小さな選択を大事にしてみてください。

 もしも子どもが手に取った本に対して、「それは難しすぎるんじゃない?」「絶対、こちらの方がおもしろいのに」と思ったとしても、一呼吸置いてみる。難しくて読めなかったら、「どう選ぶといいか」を次の機会に話し合えばいいのです。

 それに、たとえ、そのときには難度が高い本だったとしても、「よくわからないけれど、おもしろいかも」とじんわりと魅力が伝わることもあります。成長して中高生になり、「あ、この本、小学校のときに読んだんだけれどわからなかったんだよな」と思い、再び手に取ってそのおもしろさに惹き込まれることもあります。

 こうした経験は保護者のみなさんもお持ちではないでしょうか?

 つまり、その瞬間においては「失敗」と感じたとしても、長い目で見ると大事な体験であるということはよくあるのです。

 渋幕での学びは、そんな「失敗」の価値を教えてくれます。

「渋幕的自由」によって
大きく成長した卒業生たち

 生徒や卒業生からしばしば飛び出すのが「渋幕的自由」というキーワード。

 2022年度入学式で、新校長に就任された田村聡明先生が式辞で、「渋幕的自由という言葉が生まれたように、本校は自由な学校です。自由は個人の尊厳や権利を尊重するところに生まれます」と述べられました。

 では、渋幕的自由とは何なのでしょう?

 卒業生へのアンケートで、「『これは“渋幕的自由”だった』と思い出すことがあれば、教えてください」と尋ねたところ、下記のような回答がありました。

・(研修旅行の)現地集合・現地解散
・部活動ばかりしていて、高校3年生の夏の模試で偏差値が40台だったこと。「部活動を頑張っていた子は頑張る力がついているから大丈夫」と先生方にいわれて半信半疑だったが、たしかに現役合格できた
・校則がほとんどなかったこと
・「友達の誕生日会をしたい」という理由で家庭科室を借りたこと。しかも、ほぼ毎月