プログマコインは、ブロックチェーン上での即時決済、24時間稼働、銀行を介さない送金といった利点を持ち、既存の金融インフラに補完的な役割を果たす可能性がある。
こうした動きは、単なる国内の金融技術革新にとどまらず、アジア全体の金融ハブとしての日本の役割を再定義する契機となりうる。特に、香港やシンガポールが地政学的・政治的な不安定要因を抱える中で、日本の安定性と制度的信頼性は大きなアドバンテージとなるだろう。
ただし、日本が国際金融センターとしての地位を築くためには、課題もいくつかある。
まず、税制面での整備が不十分であり、暗号資産取引に対する課税が依然として複雑である点が挙げられる。また、金融庁や日銀などの規制当局が慎重であることも民間のイノベーションを阻害する要因となっている。
それでも、日本は地政学的にも安定しており、技術力と法制度の安定性を兼ね備えている。ステーブルコインを軸にした新しい金融秩序の中で、日本が積極的に制度整備と国際連携を進めれば、アジアの金融拠点としての地位を確立することが可能である。
世界通貨の新秩序めぐり
日本が果たすべき役割
トランプ大統領が進めるステーブルコイン政策は、単なる暗号資産の推進ではなく、ドルの基軸通貨としての地位を再構築し、FRBの独立性に挑戦し、政府主導の金融政策を確立する、極めて野心的な「金融革命」だと言っていい。
この動きは、国際金融秩序に大きな影響を与えると同時に、日本にとっても重要な意味を持つ。ステーブルコインを軸にした新しい金融インフラの構築において、日本が制度整備と技術開発を主導できれば、アジアの金融ハブとしての地位を確立できる。
今後、日本が果たすべき役割は明確だ。ステーブルコインの信頼性と透明性を担保する制度設計を進め、アメリカとの連携を強化し、民間と官の協力体制を築くことである。
これにより、日本はアジアにおける次世代の国際金融秩序の中核を担う存在となりうる。
トランプ金融革命は、世界の通貨主権を再定義する試みである。そしてその波に乗るか、乗り遅れるか。日本の選択が、未来の金融地図を大きく左右する。
(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)