要するに、学生生活の隔絶を背景として、第1世代自身には意識されにくい格差が存在した可能性があるということです。
以上の分析結果から浮かび上がるのは、親が大卒の学生に比べると、少し“不器用”な大学第1世代の実像です。
第1世代の東大生は、学業に熱心で大学内には友人もいる。そして自分ではそれなりに学生生活に馴染めていると感じている。けれども、親も大卒の同級生のように、大学内の「正課」の活動と並行して課外活動に参加したり、大学外で幅広い人脈を築いたりする“要領”のよさ"や“余裕”は持ちえていないのです。
もちろん、全ての学生が課外活動に参加しなければならないわけではないし、人脈が広ければ立派であるというわけでもありません。どんな学生生活を過ごすかは学生本人の自由であり、学業に専念したり狭く深い人間関係を大切にしたりする学生生活のあり方も、等しく尊重されるべきです。
また、今回の調査では質問できておらず、そのため本記事でも扱えなかった学生生活を構成する重要な要素としてアルバイトが挙げられます。学生の中には、経済的な事情からアルバイトに邁進せざるをえないせいで、本人が望んでも課外活動に参加する余裕がなかったという人もいるでしょう。
勉強しかしていない第1世代が
就活でつまずいてしまう理由
ともあれ、学生たちは(学部卒業後に大学院に進学する場合でも)何年かすれば学生生活を終え、その大多数が就職活動を経て、労働の世界に歩みを進めます。
「人物採用」を掲げる日本の就活では、学生生活の「正課」である学業の成果以上に、「課外」の学生生活で力を入れたこと――いわゆる「ガクチカ」が重要な意味を持っているようです(注6)。その際に、学生生活で課外活動や大学外の人脈形成にあまり取り組んでこなかった(第1世代の)学生が不利になってしまう可能性は、軽視できないと思われます。