そこには、物事に気軽にトライすることを肯定的に捉える価値観があるのでしょう。こうした傾向はリキッド消費傾向の強い人にもあてはまると思われます。深く考えることなく、ひとまず買ってみるという行動、つまり「軽く選ぶ消費」をみせるわけです。

 軽く選ぶ消費の背後には、短命性、アクセス・ベース、脱物質というリキッド消費の特徴があります。価値が文脈特定的になり、その場に応じて違うものが欲しくなれば、熟考することなく、ひとまず買ってみることが多くなるでしょう。

 また所有せず使用するだけなら、ひとまず試してみようという判断もしやすくなります。さらにキャッシュレスによる購買は、紙幣や貨幣などによる現金購買よりも出費を意識させず、支出の際の心理的痛みが少なくなるので、ひとまず買ってみようと思いがちになります。

社会に広まる
4つの消費

 軽く選ぶ消費を前提としたビジネスも増えてきました。ストリーミング・サービスの「Netflix」のサイトには、入会するとどのようなコンテンツを楽しめるのかについて、ほとんど説明がありません。ひとまず入会して試してみて、気に入らなければ退会してください、というアプローチです。

 フリーミアムも軽く選ぶ消費にフィットした手法です。ご存知の方も多いと思いますが、基本バージョンを無料で提供しながら、高度な機能や高機能のバージョンを有料で購入してもらうという手法で、ソフトウェアやアプリ、ウェブ・サービス、コンテンツ・サービスの業界でよくみられます。

 もちろん、入念に検討することなく選択すれば失敗のリスクも高まります。このため「軽く選ぶ」には安心して選べる環境が大切となります。その結果が「ランキング」の氾濫です。昨今では、本来単一の次元で評価できないものに対しても、無理やり序列をつけることが珍しくなくなりました。

 ランキングに加えて、製品レビューやおすすめ記事でよく見かける「星」表示も、選択に一定の安心感を与えます。しかもこうした「お墨付き情報」は第三者だけでなく、売り手の企業自身によっても付加されています。「Amazonおすすめ」や西友の「みなさまのお墨付き」などです。「軽く選ぶ」消費が世の中に浸透するにしたがい、それをサポートする仕組みも広まってきました。