売ることを前提に買うことは「一時的所有」(temporary ownership)と呼ばれ、2010年代から研究が盛んになりました。一時的所有を意識して買う人は、後日いくらで売れるかを考えて購買をするため、値落ちしにくい製品を好む傾向があります。

 マーケティング研究ではフリーマーケットやオークションを2次流通システムといいます。2次流通システムはリキッド消費環境の広まりによって充実してきたため、売ることを前提に買う人はリキッド消費時代の申し子だといえるでしょう。

SNS上の人間関係が
消費にも影響を与えた

 第4は「不即不離」です。リキッド・モダニティやリキッド消費が進展すると、人と人の関係、人とブランドの関係、人と企業の関係が希薄になります。人々は社会的な制約や管理から解放され、自由な生活を手に入れることができます。その一方で、不安や苦悩を個人で解消しなくてはならなくなります。

書影『リキッド消費とは何か』『リキッド消費とは何か』(久保田進彦、新潮新書、新潮社)

 このとき生じる、「しがらみは嫌だけれど、ひとりぼっちも嫌だ」という相反した気持ちを解消するのが、つかず離れずの関係です。それはベッタリとせず、一定の距離感を保ちながらつきあう関係であり、色々な人とちょっとずつつきあう関係といえます。

 こうした関係はSNSに代表されるデジタル・コミュニケーションによって、以前よりも容易になりました。

 私はこうした状態を「不即不離」と表現するのが最適だと思います。不即不離とは「ぴったりくっつきもせず、また、すっかり離れることもない関係にあること」です。元来は仏教概念で、2つのものが矛盾しつつも相反しないでいる状態を指します。

 縛られたくないが繋がっていたいというのはわがままにも見えますが、人間らしい素直な心理ではないでしょうか。