いずれにしても、東大卒業者と大企業および官公庁等との結びつきは、総じていまだにかなり強いことは確かなようです。すなわち、こうした組織への就職という局面においては、東大卒の学歴資本が「庇護」的な機能をいまだに発揮していると言えるでしょう。

「東大卒」が役に立っていない!?
学歴倒れのOBは4割に達している

 最後に、学歴資本の有効性を直接たずねた質問を検討します。

 これについては、「東京大学(大学院)を卒業(修了)したという学歴が役に立っている」と「東京大学(大学院)を卒業(修了)したという学歴により仕事上で不当な扱いを受けたことがある」という2つの項目を設けていました。

 後者の質問については、回答者の約9割が否定していましたので、東大卒の学歴により差別されたりするということはほとんどないと言ってよさそうです。

 しかし、前者の質問については、6割が肯定的回答(「とても当てはまる」2割、「やや当てはまる」4割)、4割が否定的回答(「まったく当てはまらない」1割強、「あまり当てはまらない」3割弱)という形で、一定の分化が生じていました。

 この回答に影響する要因を探索したところ、世代や性別、文系理系などによる明確な違いはほぼ見られず、ある程度はっきりした傾向が見出されたのは、職種については専門職および管理職、学位については博士号取得者において、「東大卒の学歴が役に立っている」という回答が相対的に多いということです。

 専門職・管理職や博士では肯定的回答が約7割を占めていました。それに対して技術職(エンジニア)や事務職では、肯定的回答は4割台にすぎません。

 ケース数は少なくなりますが、専門職の中をさらに細かく職種別に見ると、弁護士では8割弱、研究者・大学教員では7割強が肯定しているのに対して、医師では肯定率は5割強に留まるなど、やや濃淡があります。