それは、1つには、アルツハイマー型認知症だった患者の脳内からこの細菌が発見され、正常な人の脳組織からは検出できなかったこと。

 もう1つは、マウスの口腔内にポルフィロモナス・ジンジバリスとそのほかの細菌を接種したところ、ポルフィロモナス・ジンジバリスのDNAだけがマウスの脳内から検出されたからです。

肺炎、関節リウマチ、腎臓病……
歯周病は万病の元

 このように、口腔以外のさまざまな病気と歯周病との関係性が明らかになってきており、ほかにも多くの疾患において歯周病との関連が研究されています。

 いくつか注目されている例を挙げてみると、たとえば、歯周病によって口腔内細菌が増加し、それを含む唾液が気管に入ることによる不顕性誤嚥(誤嚥しているのにむせなどが起こらない状況)が原因で肺炎が発生することが報告されています。

 また、歯周病原菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスによって、関節リウマチが重篤化することも知られています。このほか、腎機能の低下や慢性の腎臓病の悪化との関連なども報告されているのです。

 歯周病の病巣である歯根膜の広さは約50平方センチメートルといわれています。重篤な歯周病の場合、このうちの何割かが慢性炎症を起こしていることになりますが、体の1部にこれだけ広い面積の慢性炎症があり、それがどこかで“がん”につながる可能性があるかもしれないと思うと、あらためて非常に恐ろしくなります。

 歯周病は人類が克服すべき重要な疾患だということを理解してもらえるのではないでしょうか。