また、糖尿病治療の中で歯周病治療が必要なことが明確となり、糖尿病患者を歯科医院に紹介して歯周病の治療と管理をするといった、積極的な医療連携が行えるようになりました。
糖尿病の方や糖尿病の心配がある方は、ぜひ歯周病の検査をしてもらってください。
動脈硬化を防ぐには
歯周病の治療が欠かせない
狭心症や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患のリスク因子については古くから研究されており、さまざまなことがわかってきています。
有名な研究の1つは、1948年に開始されたアメリカの大規模コホート研究です(注2)。
コホート研究とは、疫学的な手法の1つで、ある要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間観察し、研究対象となる疾病の罹患率などを比較して、要因と疾病の関連性を調べる研究方法のことです。
この研究結果からは、冠動脈疾患のリスク因子として、年齢、性別、総コレステロール、HDLコレステロール(余分なコレステロールを回収して動脈硬化を抑える、善玉コレステロール)、収縮期血圧、喫煙が挙げられています。
現在では、これらの古典的リスク因子に加えて脂質異常症、糖尿病、肥満もリスク因子であることが明らかになっており、さらに近年の研究により、高感度CRP(炎症時に増加するタンパク質)、IL-6の値も冠動脈疾患発症のリスクを見極める指標であることが知られています。
では、これらのリスク因子と歯周病がどのように関係するのでしょうか。実は、歯周病患者の血液においては、高感度CRPが上昇しており、歯周病治療によってその値が低下することが報告されています。
この事実から、歯周病による全身性の炎症応答の亢進が血管障害の発症および進行に関与することが示唆されています。また、歯周病原菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスが血管内皮細胞に侵入できることや、動脈硬化病変から検出されることが示されています(注3)(注4)。
(注2)Danesh, J., Wheeler, J. G., Hirschfield, G. M., Eda, S.,Eiriksdottir, G., Rumley, A., Lowe, G. D. O., Pepys, M. B., Gudnason, V.C-reactive protein and other circulating markers of inflammation in the prediction of coronary heart disease. N Engl J Med. 350, 1387-1397,doi:10.1056/NEJMoa032804 (2004).
(注3)Tonetti, M. S., D’Aiuto, F., Nibali, L., Donald, A., Storry, C.,Parkar, M., Suvan, J., Hingorani, A. D., Vallance, P., Deanfield, J.Treatment of periodontitis and endothelial function. N Engl J Med.356, 911-920, doi:10.1056/NEJMoa063186 (2007).
(注4)Nakajima, T., Honda, T., Domon, H., Okui, T., Kajita, K., Ito, H.,Takahashi, N., Maekawa, T., Tabeta, K., Yamazaki, K. Periodontitis-associated up-regulation of systemic inflammatory mediator level may increase the risk of coronary heart disease. J Periodont Res. 45, 116-122, doi:10.1111/j.1600-0765.2009.01209.x (2010).