そして、このままオーラルフレイルが進行すると、噛む力の低下や舌の筋力の低下、さらには食べる量が減少し、それに伴って低栄養や運動量の低下、代謝の低下、サルコペニア(主に加齢により、筋肉量の減少や筋力の低下が起きること)やロコモティブシンドローム(足腰が衰えて、立つ・歩くといった移動能力が低下した状態)になってしまいます。
最終的に、図4-4の一番右の段の「フレイル期」に突入し、摂食嚥下障害や咀嚼機能不全となり、運動・栄養障害からフレイル、要介護状態へと至ってしまう恐れがあるのです。
このように、高齢になるとさまざまな機能が低下していく可能性がありますが、そのきっかけとなり得るのが、一見関係がなさそうに見える「社会性の維持」であり、心身の健康において大変重要だということがわかります。
特に、70代後半になって徐々に自立度が下がっていくというのは、多くの場合、フレイルを示していると考えられるので注意してください。
さまざまな機能を低下させないためには、できるだけ上流でこの流れを食い止める必要があります。
高齢者の生活維持には
歯科医療の介入は欠かせない
われわれ歯科医療の関係者としてできることは、前フレイル期からオーラルフレイル期にならないようにすること、つまり、適切な口腔健康管理を行い、う蝕や歯周病にならないようにすることが挙げられます。
そして、残念ながら歯を抜かなければならないとなったときには、抜いた後に噛める義歯を入れる、ということになります。つまり、どこかで必ず歯科医療の介入が必要になるのです。
では、そもそも「適切な口腔健康管理」とは何でしょうか。
口腔健康管理は、「口腔衛生管理」と「口腔機能管理」の2つで構成されます。
1つめの口腔衛生管理とは、口腔内の細菌により生成される歯垢や歯石、舌苔(舌の表面に付着する白い苔状のもの)を除去して、口腔内の細菌数を減少させる、ということです。
これにより、う蝕や歯周病の発生を抑え、細菌を含んだ唾液の不顕性誤嚥による誤嚥性肺炎を予防することができます。