歯のメンテナンスは
高齢になるほど意識が低下
私たちの多くは年を重ね、定年を迎えるなどの事情によって、立場や生活環境が変わります。
中には、その新しい環境に適応できない方もいて、活動量が低下してしまうと、意欲低下やうつ状態に陥りやすくなります。そうすると、口腔の健康への関心度が低下し、歯磨きや歯科医院でのメンテナンスに対する意欲が低下してしまいます。
そして、歯にプラークが付着したままの状態が長く続き、それがう蝕や歯周病の原因となり、歯が失われてしまいます。
すると、次の段階である「オーラルフレイル期」に進みます(図4-4参照)。

歯がなくなると良好な義歯を入れない限り噛めない食品が増加します。
また、社会性の低下によって人と会話をしなくなると、唇や舌の活性が落ちて滑舌の低下や食べこぼし、わずかなむせが多くなってきます。
この状態がオーラルフレイルと呼ばれるものです。
ここで「呼ばれるもの」と表現したのには理由があります。実は、オーラルフレイルについては、その後もさまざまな研究を経て、「定義」されたのは2024年なのです。
オーラルフレイルが進めば
人は一気に老け込む
さて、私事になりますが、88歳の母が田舎に1人で住んでいます。もともと比較的アクティブな人で近所の人の世話を焼いたりしているのですが、コロナ禍によってそれも思うようにできなくなり、ときどき電話をすると「今日は誰とも話さなかった」と言うことが多くなりました。
そのときの喋り方が不安定に聞こえることもあり心配していました。もし母のこの状態が進んでしまうと、食欲の低下や食品多様性の低下により、食べやすいものだけを食べることになり、炭水化物の摂取量が増えて、野菜やタンパク質の摂取量が減る状態を招きます。
こうなると、オーラルフレイルといえるでしょう。