歯の適切なかみ合わせとは?
4つのポイント
では、適切な咬合とは、どのような状態でしょうか。4つのポイントをまとめました。
(1)かみ合わせの高さ(咬合高径)が適切であること。咬合高径が低いと、顔の下半分が狭く見える、いわゆる老人性顔貌となってしまいます。そのため、義歯を作る際、咬合高径を無理のない範囲で高くすることが求められます。
(2)上顎に対する下顎の水平的位置(下顎位)が適切で、顎の関節とも調和していること。顎の関節は回転運動と前後左右の滑走運動ができるという、人体の中でも非常に特殊な関節です。
この位置は座標の原点なので、これがずれていると、筋肉や顎の関節が「ここでかみ合わせたい」という位置とは違ったところで歯がかみ合ってしまうので、かみ合わせたときや咀嚼したときに顎の関節や筋肉にストレスがかかってしまいます。
(3)適切で審美的な咬合平面であること。この咬合平面を正確に説明するとやや専門的になってしまいますが、わかりやすさのためにあえて平易に表現するならば、上下の歯をかみ合わせたときの先端部分の横のラインを想像してください。
上下の顎がかみ合ったとき、かたい物同士が接するのはここだけなのです。したがって、面に段差がある場合などはそこで大きなストレスが生じてしまい、歯や顎の関節に障害が生じます。また前歯では笑ったときなどの歯の見え方に影響しますので、審美的には重要な要素です。
(4)適切なガイド(誘導)が存在すること。口を自然に閉じながら下顎を前後左右に動かしたときに、通常の歯列を有する人は前歯と犬歯同士が接触しながらずれていき、大臼歯は接触しません。すなわち関節から遠いところで接触することにより関節にかかる負担を軽くしているのです。
ところが総入れ歯ではすべての歯が当たりながら滑り、力のかかる量や方向を分散させることで義歯の動揺を最小限にします。顎関節の安静より義歯の安定を優先しているのです。