単なる実業家ではなく
信念ある挑戦者でありたい
「僕に言わせればエジソン、ナポレオン、信長、秀吉、家康、みな大ヤマ師です」
この言葉には、太郎の信念が詰まっています。つまり、世の中を動かしてきた偉人たちは、皆“前例のない挑戦”に賭けた勝負師であり、時に運命すら手繰り寄せる大胆さと覚悟を持っていた、という視点です。
太郎は、金儲けそのものが目的ではありませんでした。「少年よ、大志を抱け」で知られるクラーク校長の影響が色濃く残る札幌農学校で学んだフロンティア・スピリットはだてではありません。「誰もやったことのないことをやり遂げる」ことこそが、生きる意味だったのです。幼い頃からの「世のため人のためになる大きなことを成し遂げたい」という志を胸に、太郎は単なる実業家ではなく、信念ある挑戦者であろうとしました。
また、鮭缶輸入でロシア新政府から受けた妨害のように、困難な状況に直面したとき、自分一人でいじいじ悩むのではなく、あらゆる伝手(つて)を使い、可能性を広げていく。それができるのもまた、勝負師としての才能です。前例のない勝負を成功させるには、大胆さと緻密さの両輪が必要だということを、太郎はその行動で証明してみせました。
「ヤマ師で結構」――その一言には、世間の評価や既成の枠に縛られず、自らの信じる道を突き進む覚悟と誇りが込められています。現代のビジネスシーンでもなお、この精神に変わりはありません。勝負とは何か、生きるとは何か。その本質を、太郎の一言が教えてくれます。
Key Visual by Noriyo Shinoda