ちなみにこのビッグファイブは、心理学のみならず性格診断などにも広く使われています。
マジメで勤勉だけど
「考えること」を楽しまない人
さて、このビッグファイブと、前倒しのしやすさとの関連を調べたドイツのヘルムート・シュミット大学のゲーリックらの研究では、誠実性と前倒しとの関連が指摘されています(注5)。この関連をどう解釈するかは難しいところですが、誠実性が高いがゆえに、できるだけ早く仕事を進めようとする意志と結び付いているのかもしれませんね。
この研究では、情緒不安定性と前倒しとの関連もみられていますが、その関連は非常に小さなもので、一貫した答えは得られていません。また、外向性や調和性との関連を視野に入れることも検討されていますが、これについても結果は一貫していません。前倒すという行動が、社交的であるためなのか、もしくは自分の意志によるものなのかは状況によりけりですので、その関連は一貫しないのかもしれません。こうしたそれぞれのパーソナリティとの関連について、アメリカの心理学者ローゼンバウムらもその理由は明確でないと指摘しています。
さらにいえば、ワーキングメモリとの関連を扱った前節の研究では、「考えること」を楽しまない人は前倒しをしやすいと考察していましたが、誠実性との関連がみられた知見とはやや矛盾するような気もします。
前倒し派の人のなかには、深く考えずに自動的にさっさとタスクに着手する面と、真面目で勤勉だからこそ早くから仕事を進めようとする面が、共存しているのかもしれません。
(注5)Gehrig, C., Münscher, J. C., & Herzberg, P. Y. (2023). How do we deal with our daily tasks? Precrastination and its relationship to personality and other constructs. Personality and Individual Differences, 201, 111927.https://doi.org/10.1016/j.paid.2022.111927