平成の時代と比べれば、今は圧倒的に若者人材が不足していることで採用市場は売り手優位に変化しています。内定も昔と比べればはるかに出やすいですし、新卒給与の水準は以前と比べれはるかに高くなっています。
ただAIが冷徹に言っていることは、そうやって正社員になったところで、「正規労働者階層」は日本の新しい社会階層においては「昭和の時代の中流よりはずっと低い年収」でしかないということです。ですから「正規労働者階層」では夫婦共働きが標準になっています。
一億総中流の階層構造が壊れた現在、昭和の時代のような水準の中流生活を送ることができるのは「新中間層」と呼ばれるひとたちだけというのは社会学者たちが提唱する現在の日本の経済的な社会階層構造です。AIは「新中間層」に入るには、ひとことで言うと大手好待遇企業に入社し、そこで管理職になり上がれるかどうかで決まると言っています。
その入り口は、就活者全体から見れば実は狭き門であるということです。そして採用する側の大企業が常に採用の質を上げていくプレッシャーにさらされているため、採用の生産性を上げるツールにどんどん飛びつく傾向があります。学歴フィルターはその原始的なツールのひとつですが、現場で有効なことは事実で、だから使われるのです。
AIはそのようには答えていませんが、採用現場の観察事実としては、自社で活躍している社員の出身大学と、内定が出される学生の在籍大学には相関と因果関係があります。
ひとつだけ具体例を挙げると、以前だったら早慶をブランドとして考えていた企業で、最近は明治大学の採用も増えている会社があります。明治の学生の質が上がってきたことは事実だとして、因果関係としてはそういった評判よりも、10年前ぐらいに採用した明治出身の社員たちが社内で評価されているというような事情が採用枠増に影響します。
こうしてAIの話をまとめると、出世や雇用の安定を求める場合には「学歴」の役割は依然大きいこと。そして学歴のブランド偏重傾向はむしろ強まっていること。さらに学歴は親の学歴に応じて再生産されやすいことが最近の事情なのだと明確に指摘されます。