2025年も折り返し、トランプ関税や世界的な物価高、少子高齢化、移民問題といったニュースが次々と世間を騒がせる一方、新聞やテレビでは見えにくい“真のリスク”が見落とされています。そんななか、「ポジショントークなし」の冷静かつ分かりやすい経済解説をYouTubeで発信し、ビジネスパーソンを中心に人気を博しているのが、元機関投資家のモハP氏です。
「みんなが信じる情報に価値はない」「すべての情報を疑え」という彼の機関投資家思考は、「情報」が生成され続けるAI時代に必須のスキル。同氏初の著書『日本人だけが知らない世界経済の真実』の一部を抜粋・構成し、既存メディアが報じない世界の動きを解き明かします。

世界経済の真実Photo: Adobe Stock

「人口は減ったほうがいい」

「少子化・人口減少」は長らく日本経済の問題と言われてきましたが、これは本当に問題なのでしょうか? 人口が減ることは本当に良くないことなのでしょうか?

 この問題は新聞やテレビなどのメディアではほとんど取り上げられることがありません。なぜなら、政治も民間企業も「少子化が問題だから対策をしなければならない」という前提で動いているからです。「人口減少はそもそも悪いことなのか」と問い始めると、「これまでの取り組みは何だったのか」という話になってしまうのです。

 したがって、マスコミも有識者たちもこの点について議論しませんが、実際には「人口が減った方がいい」という考え方も確かに存在しています。

 私と同じ就職氷河期世代以降の方はあまりご存じないかもしれませんが、日本でも「人口増加」が問題だと言われていた時代がありました。それは高度成長期のことです。日本では戦後のベビーブーマー世代が誕生した後、高度成長期には「人口爆発」という言葉が使われ、人口増加が問題視されていました。

 これは日本だけの問題ではなく、当時先進国だった日本を含め、新興国で人口が急増することが安全保障上の脅威になるとする考え方が、アメリカなどでも提唱されていました。人口の急増によって新興国の体制が不安定化するのではないかという懸念から、世界的に人口増加を問題視する傾向がありました。このことが中国の「一人っ子政策」の導入にも影響したという見方もあります。

 今日の人口減少問題は、年金問題、人手不足、介護など、経済・社会問題という側面が強い一方、当時の人口増加問題は、現在よりも政治的な問題だったと言えます。このように、その時々で「人口問題」の意味合いは大きく変わってきたのです。