会場を提供した横浜市は、ざっくりまとめると「騒音対策のため、今後はイベント主催者ときちんと話し合い、しかるべき対策を求めていきたい」というような内容の見解を示していて、責任の所在の大半を主催者側にさりげなくスライドさせようとしているような気配があるが、音量の基準を定めた法令にも再検討の余地がありそうに思えるので、市の取り組みも期待したいところである。
これまでのロックバンドと違う点
それにしても、ミセスクラスの大きなバンドになるとちょっと動くだけでいちいち大きな波紋が広がるから大変である。
7月1日、ディズニーランドにミセスがサプライズで登場したときに客のひとりが「ミッキー邪魔」と言ったことでディズニーファンの反感を買い大炎上に至ったが、これだって別にミセスが何かしたわけでなく、ただミセスの周辺がミセスを取り囲むようにすごい勢いで炎上したという話である。
ミセスマターの話で、ミセスは渦中の人でありながら同時にミセスは蚊帳の外であるという、すごい状況である。
この話を聞いて私が最初に思ったのは、「ミッキーと同次元でディズニーに出演できるミセスはすごい」であった。ディズニーと公式でみっちり関われるアーティストなんてマイケル・ジャクソンくらいだと思っていたのである(楽曲提供や、特別企画の際にミッキーと共演、といったかかわり方はほかの著名人でもたまにある)。
もはやミセスは単なるロックバンドではなく、社会に広がる現象そのもののような、概念的存在にまで至っているのだと感じた。
今回の騒音騒動は、実際に被害を被った人たちがいる以上軽視されるべきではないが、ミセスでなければここまで列島をにぎわす大トピックにはならなかったに違いない。
従来のバンドは露出をちょっと控えたところにアーティスト性を匂わせるような傾向があったが、ミセスはとにかく露出しまくるスタイルである。たとえば先日山手線に乗ったら車内でずっとミセスの動画が流れていて、渋谷で降りたら街がミセスにジャックされていた。
こうした状況を受けて「ミセスはもうおなか一杯」と感じている非ファンの一般人はいるだろうし、その耳にミセスのライブ音が騒音として届けられれば「またミセスか」となる心情は実によく理解できる。
だがミセスにそこまでの過失はない。強いてあげるなら「露出しまくっていること」がミセスの罪である。これは実際罪なのか否か。少なくとも騒音問題とは切り離して考えられるものではある。