責任の所在はどこに?

 もしミセス自体の罪を取り沙汰するのであれば、騒音の苦情を把握しつつも現状維持のスタンスでライブを敢行したことだが、それでもまあ、「騒音で広範囲に迷惑をかけた」という結果こそあれ、そこまで悪いことをしたとは断じることができない。何しろ「法令準拠内」での演奏で悪意はなく、後ろ指をさされる要素はなかったのである。

 アーティストの指示で基準を超える音量が出されていたらこれは大問題だが、はたしてミセスの場合はどうだったか。ミセスはロックバンドとはいえ結構品行方正な印象があるので、音量でわざわざ妙な冒険はしないような気がする。あくまで私見である。

 ライブが開催されるにあたって、演者のタスクは「与えられた会場で全力で演奏するだけ」だけなのが理想的である。会場の手配からステージの実演など1から10まですべて手弁当でやるアマチュアとは違い、プロの現場では会場のプロ、音響のプロ、イベントのプロなど、多くのプロフェッショナルが関わっていて、その中で「演奏のプロ」として仕事をするのが演者である。

 その演奏のプロであるミセスに対して「会場から漏れる騒音について配慮すべし」と求めるのはいささか酷ではあるまいか。

「アーティスト」と呼ばれ、全体を代表し監督する権力を持つ演者であっても、10周年の大事なステージをどうパフォーマンスするかについて頭をいっぱいにしていいはずで、ステージパフォーマンス以外のところは他のプロにしっかりケアをしてほしい。だからこの騒音問題は、ミセスというバンドそのものを直接批判するよりか、ミセスを含む関係組織全体を批判した方が、批判する対象としてより正確である。

 ともあれ、風が少し強かったからといって広範囲に渡って騒音問題を引き起こしたのであれば、音量にまつわる基準の設定の甘さに原因があった可能性もおおいに検討すべきである。