「風が強かったから」はどれくらい本当か
ミセスのライブ音がそれだけ大きかったのはPAシステムがおそらく同会場で過去最大規模だったことに深く関係しているであろう。では、公式が挙げている「風が強かったから」はどれくらい真実を含んでいるか。
結論からいってしまうと、これは「どの程度影響があったかは測れないが、影響はたしかにあっただろう」ということができそうである。
横浜市の7月の平均の風速12.87km /時弱(8mph弱)に比べて、ライブのあった両日ともに強く、19、20km/時の南風を記録した時間帯もあった(参考データはWheather Sparkおよびtime and date)。まあまあ風が強い日だったのである。
周波数の低い音(ベースやキックドラムのような低音)は壁などを貫通しやすく、遠くまで響くが、指向性(音の進む方向)は低く全体に広がるような性質を持つ。各所でベース音が際立って響いて聞こえたのは低温のその性質のためである。
「低周波は波長が長いので乱気流(風)の影響を受けにくい」とする説が見受けられる一方で、「風があれば風下方向は音が遠くまで届く」とする研究もある。専門ではないので詳しく正確には表現できないのをご了承願いたい。まあ一応の真理として音も波である以上風の影響はどうしたって受ける。
その際、上に向かって放射された音は、上空ほど風が強いので一方向に流され斜め下に向かっていく。これは「音の屈折」という現象で、遠くのある地点に、斜め上から来た音と横から来た音が一極集中して、「遠くなのにかえって音が大きく聞こえる」という不思議な状態が起きることがあるそうである。この音の屈折がミセスライブで起きていた可能性はありえる。