「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」
「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。
「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」――。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

【「なんでやってないの!?」は逆効果。】子どもが“夏休みの宿題をやらない”とき、どう声をかけるのが正解?Photo: Adobe Stock

「宿題いつやるの?」「なんでやってないの?」は逆効果

子どもが、ゲームをしたり、友達と遊びに出かけたりしてばかりで、全然宿題をやっていない……。そんな夏休み、誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。親としては、ついイライラして言ってしまいますよね。

・「夏休みの宿題、いつやるの?」
・「なんで、やってないの?」

でも、こうした言い方は、実は“逆効果”になることが多いのです。今回はその理由について考えていきましょう。

問い詰めるのは危険

子どもが宿題をやっていないと、将来の計画や原因を確認したくなる気持ちはよくわかります。
しかし、たとえば、「いつやるの?」のような質問は、先の予定はあいまいなので、どうにでも答えられますよね。「なんでやってないの?」と言ってしまうと、責められているように感じて、言い訳が出てしまいます。
しかも、詰問調になってしまうと、子どもは「自分を守ろう」として、うそをついたり、口をつぐんだりするようになります。

大人でも、いきなり「なんでできてないの?」と責められたら嫌ですよね。それと同じことが、子どもにも起きているのです。

「事実」だけを淡々と聞く。これが効果的

そこで効果的なのが、本書で紹介している「事実質問」です。事実質問とは、「答えが1つに絞られる質問」のこと。「いつ?」「何?」「どれだけ?」という、目の前の事実だけを確認していく質問です。

たとえば、こんなふうに聞いてみてください。

・「ところで、夏休みの宿題って、何が出てたんだっけ?」
・「えっと……日記と、ドリルと、自由研究」
・「ドリルって、何日分くらいあるの?」
・「30日分」
・「今日って、何日だっけ?」
・「うーん……8月2日」
・「夏休みは何日まで?」
・「……31日まで」
・「残りはあと何日?」
・「30日かな…?」
・「そっか。じゃあ、どうしようか?」

このように事実だけを淡々と確認していくことで、子ども自身に「気づき」を促すことができます。
子どもが「やばいかも」と思ったら、そこからどうやるかを、自分で考えはじめるようになります。
親が「こうしなさい!」と命令するのではなく、“本人に考えさせる余白”があるほうがよいのです。

本人が“気づく”手助けをすること。そのためには、未来や理由を問うのではなく、目の前の「事実」を静かに確認していくのがベストだと、私は考えています。

人間関係の基礎には、コミュニケーションがあります。そしてその始まりはいつも、「質問」です。良い人間関係の基礎には、良い質問がある。これを意識しながら、部下と接することを心がけてみてください。

(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』に関する書き下ろしです)