誰もが働きやすい“理想的な職場”のために

 5本目の動画「ステレオ地雷発見ワーク」は、いくつかのシチュエーション動画を見ながら、その中に隠れている「ステレオ地雷(思い込み)」を探すエクササイズだ。架空の企業で行われる社員同士や取引先相手との会話から、ステレオタイプや偏見・思い込みによって引き起こされた「ステレオ地雷」を見つけていく。このシチュエーション動画を、私は、「アンコンシャスバイアス研修」の受講時に視聴し、グループワークで「ステレオ地雷」を探したが、「あるある」なケースの連続に何度もうなずいた。同じような言動やチュエーションは、どんな組織でも、日常的にあり得ると思う。また、バイアスと言えば、「性別」がクローズアップされがちだが、このシチュエーション動画では、「年齢」や「国籍」など、さまざまな属性についての「ステレオ地雷」が紹介されていて、多様なバイアスがあることを気づかせてくれた。

セルフラーニング型研修動画「アンコンシャスバイアスの対処法」より
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セルフラーニング型研修動画「アンコンシャスバイアスの対処法」より
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 これまで、5本の動画視聴を通じて、アンコンシャスバイアスに関する知識を得て、自分自身にも、まだ、アンコンシャスバイアスが潜んでいることを再確認した。

 そして、6本目の動画が、いよいよ、「アンコンシャスバイアスの対処法」だった。中原教授が、3つのセルフチェック方法を解説しているなかで、私はそのひとつ――「もし私だったらどう思うかメソッド」が、最も実践しやすいように感じた。「もし、私だったら……」と思うことは、言い換えれば、「他者の視点」「相手の視点」に立って物事を捉えること。「他人の『靴』を履く」というフレーズも紹介されていたが、相手の立場に立って共感すると、自分目線ではわからなかったバイアスに気づくこともできるはずだ。

 しかし、3つのセルフチェック方法を実践しても、相手に不快な思いをさせてしまったら……? その場合の“究極の対処法”を、動画の最後に中原教授がアドバイスしてくれた。それは、とてもシンプルですぐに実践できるものだが、ネタバレになるので、ここでは書かないでおく。

 7本目の動画である「エンディング」は、中原教授と島田教授からのメッセージが収録されていた。島田教授の「余裕がないとき、疲れているときにアンコンシャスバイアスは起こりやすい」という言葉が、私には刺さった。余裕がないときほど、物事を単純化して(=バイアスによって)片付けてしまいたくなるもの。ステレオタイプに当てはめて考えたほうが楽(ラク)だからだ。

 こうして、7本の動画を視聴してきたが、どの動画も、わかりやすく、10分程度で構成されていて、飽きずに学習することができた。改めて、さまざまなアンコンシャスバイアスがあることを学んだうえで、具体的な対処法を知ることができたのは、私にとって大きな収穫だった。

「開発から3年が経った現在(いま)、職場における『アンコンシャスバイアス』の課題は依然として解消されておらず、問題意識を持つ企業が増えていると感じます。人手不足が進むなか、さまざまな属性の人が活躍できる組織やチームをつくることはますます重要になってくるでしょう。そのためのツールとして、セルフラーニング型動画『アンコンシャスバイアスの対処法』を利用していただきたいです」(広瀬さん)

 偏見や思い込みのない、誰もが働きやすい環境は、不本意な離職を減らしていくだろう。まずは、一人ひとりがアンコンシャスバイアスの存在に気づくこと――それが、働きやすく、働きがいのある“理想的な職場”の入り口になるにちがいない。