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この春入社した10人の新卒社員を対象に、新人社員研修が始まった。この会社ではコミュニケーションを育むため、伝統的に宿泊で研修を行っている。ところがある新人が「どうしても宿泊研修には参加できない」と言ってきた。社長は「入社後2カ月はまだ試用期間。研修に参加しないならクビだ!」と言うのだが、どちらの言い分が通るのだろうか。また、「配属を早めてほしい」という現場の声に応え、スケジュールを前倒しにして入社前に新人研修を行う場合、内定者に参加を強制することはできるのだろうか。(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
従業員数400名の製造卸売業。本社から片道3時間の場所に工場兼物流センターがある。今年度の新入社員は10名(男女各5名)、入社後2カ月間は試用期間。
<登場人物>
A:甲社人事・総務部長で45歳(以下「A部長」)。15年前から新入社員研修の担当をしている。
B:新入社員
C:甲社の社長
D:甲社の顧問社労士

2023年度の新入社員研修がスタート

 4月1日。午後会議室に集まった10名の新入社員を前にしたA部長は、

「今から新入社員研修を始めます。最初にこれからの予定について説明しますので、先程皆さんに配った書類を見てください」

 と言った。

2023年度・甲社新入社員研修スケジュール概要
・4月1日(土)
入社式 10:00~11:30
昼食会 11:40~13:00
新入社員研修スケジュール説明 13:20~15:00  説明担当 A部長
入社時各種手続きの説明 15:20~17:00  説明担当 総務主任

・4月3日(月)9:00~17:00
社会人としての心構え、マナーなど 講義担当 外部講師、
本社各部署見学  担当 A部長
場所:本社会議室

・4月4日(火)~4月7日(金)
宿泊研修(3泊4日) 4月4日9:00 本社会議室集合・社用車にて移動
場所:甲社物流センター ○○県○○市
研修内容:C社長の講話、会社の業務概要説明、職場実地見学と体験など(詳細は4月3日配布)
参加者 C社長 A部長 総務課社員4名 新入社員

・4月10日(月)休日

・4月11日(火)~5月26日(金)
所属先研修

 休憩時間中、A部長の元にBが駆け寄ってきた。

「B君、どうしましたか?」
「宿泊研修って、物流センター内の宿泊施設で寝泊まりするんですよね?」
「はい。さっき説明した通りです」
「その部屋って、個室ですか?」
「ゴメン、それを言い忘れてました。部屋は相部屋で、総務課の先輩社員1名と新入社員3名もしくは2名がグループになります。皆が一緒の部屋で寝起きすることで仲良くなれますよ」
「相部屋ですか、そんなのダメダメ、絶対ダメです」
「ダメって、一体何がダメなんですか?」
「自分は他の人と一緒の部屋に泊まれないんです。だから宿泊研修には参加できません」
「えーっ!」