2万円の店長手当の代わりに、仕事は倍増
Aが勤務する乙店は、年中無休で営業しているショッピングモール内にあり、大層繁盛しているがその分忙しい。15名いるアルバイトだけでは人手が足りず、Aが残業や公休日の出勤などシフトに多く入ることで何とか調整していたが、店長になってからは、それに加えて急なアルバイトの欠勤にも対応しなくてはならなくなった。
さらに閉店後の片付け、商品の注文発注、新入りアルバイトの指導もしなければならず、残業時間がどっと増えてしまった。アルバイトの採用や仕入れ業者の選定、売上管理はB本部長が担ったが、夏になればかき氷を販売するので客が増え、忙しさはヒートアップするはずだ。
仕事のやりがいは感じていたAだが、ひどくガッカリしたことがあった。6月25日の給料支給日に5月分の残業代が1円もついていなかったのだ。B本部長に確認すると、
「店長は管理職だから、残業代とか、自分の休日に働いても手当はつかないんだよ。前もって話したと思うけど……」
と言われた。聞いていたような気がするが、当初はうれしい気持ちが先に立っていたので、よく覚えていない。
「本来は週5だったのに、今じゃ朝から晩まで仕事して、休日もない。それなのに2万円の店長手当だけしか出ないとは……。7月からはかき氷も売るから、もっと忙しくなる。店長なんて引き受けなきゃよかった」
友達と飲みに行けないくらい忙しくなったのに、昇給もなし
7月上旬、Aは大学時代の友人Cから「久しぶりに会おうよ」と誘われたが、「仕事が忙しい」と断った。Cは怪訝そうにたずねた。
「Aって確か、アルバイトだよね。なんでそんなに仕事が忙しいの?」
「5月から店長になってね。おかげで休憩する時間もないし、バイトの子が急に休めば代わりにシフトに入るから、休みもなしさ」
「アルバイトなのに店長だなんて、ずいぶん会社にこき使われてるじゃないか」
「そうだね。おまけに給料が上がらないから、余計に気が滅入るよ」
「どういうこと?」