入社翌日に退職「入社祝い金を返して」「返す必要ないっしょ」会社と新人、どちらが正しい?入社祝い金30万円を支給した翌日、1人の新入社員が辞めると言い出した。入社祝金は返金してもらえるのか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

若手社員の獲得が難しいのは、昨今どこの会社でも共通の悩み。ある企業では、新規採用者には入社祝い金を30万円渡すことにした。祝い金が奏功して若手社員が数人入社したのはよかったが、受け取ったあとすぐに「会社を辞める」という社員が現れた。この場合、会社は退職する社員から入社祝い金を返してもらえるのだろうか?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
 関東地方にある創業50年のチルド食品製造卸売会社で、従業員数は200名。
<登場人物>
A:甲社の社長。50歳
B:人事・総務部長。45歳
C:中途採用の新入社員で28歳
D・E:Cと同期で入社した新入社員。2人とも20代後半
F:甲社の顧問社労士
乙社:創業60年の機械製造卸売会社。乙社長(50歳)は幼なじみでA社長と仲がいい。

業績は好調なのに、若手社員が入ってきてくれない

 甲社は、コロナ禍や物価高の影響で内食需要が増え、看板商品の餃子やシュウマイの売上が伸びたことで業績が大幅に上昇した。事業拡大に向けて、来年には関西地方に製造工場と営業所を新設する計画を進めており、資金面の準備も整った。社員の確保についても、工場現場のパート社員を募集する際、時給を近隣会社より高く設定する、転勤する正社員の定年を延長するなどで、一定の人数は集まる見通しだ。

 しかし、将来の幹部候補となる若手社員が過去3年間採用できていないことが大きな問題だった。大学や専門学校に求人票を提出し、会社説明会も実施したが、参加した学生が採用試験を受けることはなかった。中途採用にも力を入れ、ハローワークや自社のホームページ、求人媒体を活用しているが、応募者が少ない上に、面接で条件が合わず、採用に至らない。手詰まり状態の中で時間は刻々と過ぎていった。