逃げなかったのはなぜか? 震災当日、六本木ヒルズ48階で起きた“静かな修羅場”
東京大学大学院卒業後、ゴールドマン・サックスに入社。
30代にして上位数パーセントの幹部、マネージング・ディレクターに就任し、アジアのトレーディングチームを率い、巨額の利益を上げた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトップトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)。投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法有望な個別株の見つけ方まで、すぐに役立つノウハウが満載!

【実録】「顔色が真っ青ですよ!」…震災の日、誰も避難しなかったゴールドマン・サックスの真実Photo: Adobe Stock

「顔色が真っ青ですよ!」地鳴りのような一言

「宇根さん、顔色が真っ青ですよ!

部下のKYから、そう指摘されたときの私は、今にも貧血を起こしそうな顔色をしていたに違いありません。

運命の3月11日、地震がすべてを変えた

2011年3月11日14時46分、日本株式市場の大引け15分ほど前、突如として日本列島を襲った大地震は、当時、その六本木ヒルズ森タワー(東京・港区)の48階にあったゴールドマン・サックス(GS)のトレーディングフロアを激しく揺らしました。

世界が動く場所、トレーディングフロアの異常事態

投資銀行において金融商品の売買をする社員が働く場所は、「トレーディングフロア」と呼ばれます。

私は当時、そのトレーディングフロアで、会社として売買の意思決定をする「トレーダー」という職務に従事していました。

終わらぬ揺れ、揺れる経済の最前線

本震が終わっても、しばらく揺れは収まりませんでした。

フロア全体が2メートルほど、左右にゆっくりと揺れていた感覚を今でも鮮明に覚えています。

おそらく耐震性を高めるため、高層階になるほど左右に大きく揺れる構造になっているのでしょう。

衝突寸前!? 東京を襲った非現実的な光景

景色を360度見わたせる六本木ヒルズ森タワー特有のドーナツ型フロアから外を見ると、遠く離れたJR東京駅前にある「丸の内ビルディング(丸ビル)」と「新丸の内ビルディング(新丸ビル)」が大きく左右に揺れており、今にも衝突しそうなほどの勢いでした。

見えた「煙」、脳裏をよぎる最悪のシナリオ

東京湾の方向に目を移せば、千葉県木更津市のあたりでしょうか、京葉臨海コンビナートの石油貯蔵タンクのような施設から、煙が出ているのが目に入りました。

石油タンクが爆発するのではないか」と想像をしている自分に、はたと気づきました。

『日本沈没』が現実になるとき

以前、映画『日本沈没』のポスターを「TOHOシネマズ六本木ヒルズ」の前で見た記憶が突然蘇よみがえり、最悪の事態を想像してしまったのです。

「もう何が起きてもおかしくない」――トレーダーの心が揺れた瞬間

もう何が起きてもおかしくない……そんな気分でした。