「期待されていない」と傷つく前に
自分の行動を正当化
●合理化
受け入れがたい感情や欲求に、もっともらしい理由をつけて正当化し、自分を納得させることで、いわゆるイソップ童話で有名な「すっぱいブドウ」と呼ばれる現象です。
童話の中で、キツネは、自分の背より高いところに生っているブドウに手が届かないので、本当は食べたいのに、「あのブドウはまずい(はずだ)、だから私は敢えて取ろうとしないのだ」と自分の行動を正当化するのです。
自分は期待されていないと思ったとして、それを認めると傷つくので、「昇進しても責任が増えるだけだし、今の仕事ぐらいがちょうどいい」「残業しないほうが健康的だ」などの理由をつけて、自分のやる気の低下を正当化します。頑張らないことに罪悪感を抱かないようにする心のメカニズムなのです。
●反動形成
これは受け入れがたい感情や欲求とは正反対の行動や態度を取ることです。本当はもっと成長したい、もっと認められたいという欲求があるのに、それが叶わない現実を前にして、無関心な態度を装ったり冷笑的になったりします。
頑張っている人に対して「大変だねえ(苦笑)」と言ってみたり、出世している人が本当はうらやましいのに、「責任が増えてかわいそう」と言ってみたりする。こうした態度は反動形成の典型例です。
入社当初は誰もが意欲的で、会社や仕事に対して前向きな気持ちを持っていたでしょう。しかし、何らかのきっかけで期待と現実のギャップを感じ始めます。
最初は小さな不満や疑問にすぎなかったかもしれませんが、「思っていた仕事と違う」「上司が自分を理解してくれない」「頑張っても評価されない」といった経験が積み重なり、次第に「頑張っても意味がない」という学習性無力感が形成されます。
一生懸命取り組んでいた仕事に対しても、次第に熱意を失い、最低限のことだけをやればいいという考え方に変化していくのです。
こうした防衛機制の発動は、子どもじみた態度に映るかもしれません。実際、防衛機制が働くのは自我の発達が未熟だからです。人は成熟するにつれ、少しずつ現実を客観的に受け止め、自分のことを距離を置いて俯瞰できるようになります。
「上司に認められていない」と感じたなら、その現実を素直に受け止めて、「ならば、今度からはこちらの方向で頑張ってみよう」と、現状に即した目標と効果的な戦略を立てられるようになるのです。