デザイナー個人の成長と
事業の成長をつなぐマネジメント

――現在、デザイン組織は30人ほどの規模と伺いました。

 そうですね。約30人のメンバーを、特にグループ分けせずに事業ごとにアサインする形です。育成という面では、現在は体系的な教育プログラムもないので「目標」と「自己成長」が基本です。メンバーが「学び続けられる環境」をいかにつくるか、もマネジメントの大きな役割です。

 そのためにも、ちょっと難しいこと、ちょっと毛色の違うことにチャレンジできるチャンスをつくらないといけないんですが、常におあつらえ向きの仕事があるわけじゃありません。社内を徘徊するのは、メンバーのチャレンジの種を探すためでもあります。

――デザイナーっぽくないことも幅広くやるのでしょうか。

「これ、デザインだっけ?」とかいちいち考えないで、困りごとがあれば解決しようという感じですね。実際、活躍しているデザイナーは、必要ならSQLも書くし、写真も撮るし、営業のメンバーと一緒に客先にも行く。自分に制限をかけず、目の前の人に喜ばれる方法を追求しながら仕事を楽しんでいますし、私もそうありたいと思っています。

――そのプロセスで、相手が「あ、これがデザインの力か」みたいに気付いてくれたり。

 そうです、そうです。ただし、何でもやるわけじゃなくて、「やらされ仕事」は断ります。単に便利に使われてもデザイナーは成長しないし、事業の成長にもつながりません。

――デザイナーに対しては、個人の目的意識と事業の成長をつなぐために、CDOとしてどのような「翻訳」をしていますか。

 基本的には「何のためにやっているか」を言い続けることですね。エムスリーの数少ない行動指針の一つが「クライアントファースト」です。プロダクトを作る上でのデザインの役割は、ユーザーに対してどれだけ本質的なものを作れるかであり、ユーザーが喜んでくれればわれわれの資産が増え、それを原資に新しい事業にチャレンジできる。この先に社会課題の解決がある、というつながりを非常に大事にしています。

 これはデザイナー個人のレベルでも同じです。目の前の事業を伸ばせば、新しいことにチャレンジできて、理想や目標に近づける。どちらも同じ構造だと思っています。

デザイナーも売り上げで評価すべき!商売人のDNAから生まれたシンプルなデザイン評価軸RYUSUKE KOGETSU
エムスリー 業務執行役員 CDO。大阪芸術大学映像学科卒業。Webを主な領域とするデザイナーとして、ラジオ局傘下の制作会社、GyaOを経て2009年にエムスリー入社。8年勤めたのち、ビズリーチに転職し、デザイナーの採用や教育を担う組織を立ち上げる。20年、エムスリーからの要請を受け再び入社し、デザインチームの拡大を担う。21年4月、CDOに就任。24年4月より現職。