「ニュータイプ」のコンサルが体験設計をリードする!ビジネスに感性価値もたらすデザインのアプローチとはsata / PIXTA

より良い顧客体験を創造するためには機能価値だけではなく、感性価値を高めることが不可欠だ。しかし、「感性」は売り上げやコストのような数字で実感しづらく、その追求にリソースを投下し続けることは簡単ではない。クリエイティブへの投資を経営アジェンダに組み込み、ビジネスを成長させる手段として駆使するためには、何が必要だろうか。アクセンチュアにおいて、「生活者起点」でクライアント企業のビジネス変革を支援する、アクセンチュア ソングの統括本部長・黒川順一郎氏に聞いた。(聞き手/音なぎ省一郎、構成/フリーライター 小林直美、撮影/朝倉祐三子)

概念や思考にとどまっては意味がない
デザインに意味を持たせるアウトプット志向

――アクセンチュアは、コンサルティング企業としてはかなり早くからデザインの力を生かした顧客体験(CX)の設計に取り組まれていますね。

 アクセンチュア ソングの発足は2022年ですが、その前身は13年に立ち上げたアクセンチュア インタラクティブです。ちょうどGAFAがものすごい勢いで日本市場を席巻し、生き残るためには変革が不可欠という危機感が日本企業に広がったタイミングでした。「デザインシンキング」という言葉がバズワード的に語られるようになったのもこの頃です。

 同じ年、アクセンチュアはロンドン発祥のグローバルなデザインファーム「Fjord(フィヨルド)」を買収し、「顧客体験」を起点にしたサービスを本格的に始めています。「デザイン」を強化してクライアント企業に不足するケイパビリティを補い、変革をサポートするためです。

 初期から徹底してこだわってきたのが「アウトプット」です。大事なのは売り上げ、利益、成長であり、デザインはそのための手段であって目的ではない。だとすれば、デザインシンキングの浸透やPoC(概念実証)にとどまらず、経営課題を解決するプロダクトやサービスをきっちり市場に出していくことがサービサーとしての私たちの責任だと。この姿勢は初期から一貫して変わっていません。
 
――立ち上げから12年、CXの創造にデザインの力は不可欠であるという認識は日本企業に浸透しましたか。
 
 業種によって温度差はありますが、着実に浸透しています。特に化粧品やアパレルのようにコンシューマーの感性に近い消費財を扱う企業では、商品はもちろん、店員、店舗デザイン、触った感じも含めたブランド体験が非常に重要です。デザインの力なしに実現しないことは当然のこととして認識されています。

 一方、半導体のような中間製品を扱うB2B企業にとって、「顧客体験」という言葉はぴんとこない場合も多いかもしれません。とはいえ、B2Bでも、製品の先にいるエンドユーザーにどのような価値を提供できるかを考えることは重要です。私たちが直接関わったものでは、素材のブランド開発とビジネス展開を支援した事例が分かりやすいと思います。