ニュースな本写真はイメージです Photo:PIXTA

会話中についスマホに手が伸びる。それだけで、相手との距離が一気に開いてしまう。便利さの裏で、私たちは人とのつながりを失っている。スマホで常につながってしまう時代に、どうすれば人間関係を守り、自分を見失わずにいられるのか?※本稿は、谷川嘉浩『スマホ時代の哲学「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険【増補改訂版】』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

気づけば複数の端末に囲まれ
スマホから離れられなくなった

 現代は、文字通りの「ユビキタス(遍在、あまねく存在する)」な接続が可能になった時代であるだけでなく、膨大な刺激やコミュニケーションを並行処理しており、そのマルチタスキングぶりを自分でも気にしなくなる時代だと言えるかもしれません。

 IT大手のシスコ社が2020年2月に出したレポート(Cisco Annual Internet Report 2018-2023)では、2023年までに世界のデバイス(編集部注/情報処理やデータ通信を行うための装置や機器全般)数は293億台(1人あたり約3.6台)になる見込みで、デバイス同士の接続がなされているものの数は、全デバイスのうち147億台になると推定されています。

 ラグのないコミュニケーションへの期待が高まること自体は以前からあることではあるものの、膨大なデバイスに囲まれ、対面的な相互作用とは別に、それぞれのデバイスで複数のコミュニケーションや作業を並列処理している時代が、それ以前と全く同じかというと、そうではありません。

 では、結局のところ、このメディア環境の変化は何をもたらしているのでしょうか。