その重さも圧倒的です。地球上にいる細菌の重量をすべて足すと、全人類の総重量のおよそ1000倍にもなると推測する報告もあります。微生物は目には見えなくとも、数でも重さでも、地球上で圧倒的な比率を占めている生物なのです。

微生物は地球環境に大きな影響を及ぼしている

 そんな微生物は、地球全体の営みの中で大きな役割を果たしています。その中で特に注目すべきなのは、多くの生物が生きるために必要な酸素の生成です。

 通常、酸素の生成は植物が行うと考えられがちです。酸素がつくられる場所として、鬱蒼(うっそう)としたアマゾンの熱帯雨林などをイメージする人も多いかと思います。しかし、それ以上に酸素を多く生成している場所が、じつは海洋です。木々が豊かなアマゾンや東南アジアの熱帯雨林は、確かに酸素を供給していますが、それ以上に海洋が重要なのです。

 海洋には陸上のような目に見える広がりを持つ森はありません。では海洋の中の何が酸素をつくっているのかというと、それは微生物です。海には、光合成細菌のシアノバクテリアや微細藻類の珪藻(けいそう)など、光合成をする微生物がたくさんいます。これらの微生物が海中の二酸化炭素を取り込んで酸素と有機物を生み出しています。大気に供給される酸素の半分以上が、海洋の微生物から生み出されているといわれています。

 ちなみに、このシアノバクテリアは、生命の進化においても重要な役割を果たしています。

 地球が形成された初期は、酸素がほとんど存在せず、水蒸気や二酸化炭素、窒素が主要な成分でした。

 それが、今からおよそ30億年前に、水を光のエネルギーで分解する酸素発生型光合成細菌であるシアノバクテリアが登場しました。

 それによって海水中に酸素が加わり、やがて大気中にも広がり、酸素のエネルギー効率のよさから、生物の種類も数も一気に増えていきました。

 もしもシアノバクテリアが誕生していなければ、酸素が含まれた大気は存在せず、酸素呼吸をする生物、ひいては私たち人類も誕生しなかったかもしれないのです。