
私たちは高度な知能を持ち、さまざまな技術で社会を発展させてきた人間こそが、他の生き物とは違う、特別な存在であると考えがちです。しかし、東京理科大学教授の鈴木智順氏は、もしごく小さなものまでくっきりと見える目を持った宇宙人がこの地球を観察したら、「この星を本当に動かしているのは、微生物たちだ」と思うだろう、といいます。鈴木氏の著書『地球を動かしている 微生物のすごい話』(青春出版社)から、驚くべき微生物の世界を抜粋して紹介します。
地球を支える、姿は見えずとも圧倒的存在
みなさんは、微生物と聞くとどんな生き物を思い浮かべますか?
ヨーグルトや納豆、味噌といった発酵食品をつくる細菌、パンのカビ、感染症や食中毒の原因になる病原菌、そして、お腹の中にいる腸内細菌など、身近な存在を想像される方が多いのではないでしょうか。
ところが、さらに範囲を広げてみると、私たちの手が届かないところにも、ありとあらゆるところに微生物(細菌、古細菌、真菌、原生生物、微細藻類など)は存在します。
その範囲は、地上10~16kmの対流圏から、水深6000mの深海底や地下5000mの地殻まで、さらには極寒の南極の雪や氷の中、100℃超えの熱水の中にまで、地球上に微生物がいないところはないといっても過言ではありません。私たちの視線の先には、必ずといっていいほど微生物が存在するのです。
その存在数の多さを示す例として、地球上には、約10の30乗(1,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000)個という、0が30個もつく数の細菌が棲息しているという研究報告があります。観測可能な宇宙に存在する星の数は10の23 乗(100,000,000,000,000,000,000,000 = 0が23個)個といわれるので、広大な宇宙に散在する星の数よりも、地球に棲む細菌のほうが圧倒的に多いことになります。