アメリカのアリゾナ大学の研究によると、「85%の確率で正答し、15%の確率で誤答するときに、最も大きな学習効果が現れた」ことから、「最適学習85%ルール」が実証されています。これは、何かを学習するうえで15%は難しい問題を入れると学習効果が最大になるということです。

 小さな失敗をたくさん経験させることで、失敗を怖がらない姿勢が身につきます。勉強もスポーツも工作も料理も実験も、小さな失敗の宝庫です。子どもが失敗して泣いたり、苛立ったりしても、気持ちの切り替えは早いものです。

 子どもが続けたいというなら、うまくいかなくても続けさせてみる。同じ失敗を繰り返すようなら、そっとアドバイスしてみる。「失敗しても改善を加えてやり続けていれば上達する」ということを教えていけば、やりぬく力となり、回復する力(グリット)につながります。

 子どもは遊びの天才ですから、失敗する天才でもあります。そもそも失敗を失敗だと思わないのが子どもの強みですから、どんどん“失敗慣れ”させましょう。

量をこなしていくうちに
自然といいものが生まれる

「失敗は質と量、どちらが大事ですか?」という質問に対して、『Art & Fear』という本で紹介されている陶芸クラスの実験が参考になります。

 クラスを2つのグループに分け、一方は作品の「量」、もう一方は「質」で評価するという実験です。

 実験の結果、最も質の高い作品が出たのは「量」のグループでした。「量」のグループは1時間ずっと粘土をこねましたが、「質」のグループは50分間話し合い、10分間だけ制作したのです。

 この実験からわかるのは、完璧にこだわって考えてばかりいても質は高まらない。手を動かして制作し続けた時間の長さが、質を高めてくれるということです。

 私自身の寿司修行の経験でも、最初はアジの三枚おろしもろくにできなかったものが、回数を重ねるうちに上達していきました。車海老の仕込みでも、何度も失敗と修正を繰り返して技術を身につけていきました。