「で、前職ではどんなお仕事を……あ、なるほど、じゃあ企画の数字も見られていたんですね」
「休日の過ごし方とか、ストレスを感じた時って、どう対処されていますか」
「ああ、だんなさんは□□社にお勤めということは、2人とも職住接近で便利ですね」

 私はそれほどカフェに行く人間ではない。それでも上記のような場面に遭遇している。よく行く人ならいくらでも同様の事例を見聞きしているだろう。もはやカフェは、機密情報や個人情報の“路上販売所”と言えるかもしれない。

なぜ人は公共の場でも“べらべら”話すのか

 ただ、昔から情報「ダダ漏れ」の会話は喫茶店や居酒屋でよく交わされていた。したがって、内部事情を話すこと自体が最近特有の現象ではない。

 最近の問題は、話している人が“大声”でまったく周囲の目(耳)を意識しておらず、“情報漏洩に無自覚”なことである。そのゆえんは、主として「オンライン会議」だからである。

 理由としては次のようなものが考えられる(チェーンのカフェなどでは、オンライン会議や席での電話を禁じているところも多いが、ビジネス街などでは、黙認されているのが現状のようである)。

●「ロンバード効果」
 カフェは雑音(BGM・会話・コーヒーマシンの音など)が多く、自分の声が聞こえづらいため、無意識にその雑音に「勝とう」として声が大きくなる。また、イヤホン装着で外部音がそれなりに遮断され、自分の声が反響しないため、「音量が小さい」と脳が錯覚し、自然と声が大きくなる。これがロンバード効果と呼ばれる現象である。

●「他人がいない」つもりになる
 話者はヘッドセット越しに「会議空間」に没入しており、自分が現実のカフェという公共空間にいることが意識から抜け落ちている。結果として、周囲に配慮する感覚が希薄になり、まるで個室で話しているような錯覚に陥る。

●自己正当化の心理
 周囲の視線にはうっすら気づいているが、「これは仕事なんだから、多少うるさくても仕方ない」と自分を正当化している。特に「重要な話」「プレゼン中」などの場合、「自分の声を抑えるより、目先の成果が大事」と無意識に判断してしまう。