●発話タイミングの緊張感
 オンライン会議では「割り込まないと発言できない」ため、「今だ!」とばかりに強くはっきり大きな声で発話しがちである。そして、そのトーンで声を張り上げ続ける。これが公共空間で起きると、かなり耳障りになってしまう。

●場違いに気づけない
 社会経験が少ない若手や、「どこでも働ける俺、カッケー(格好いい)」と思っている層にありがちだが、周囲からの自分の見え方に無頓着な人たちがいる。彼らは、「相手にちゃんと届いているか」「今自分はどう見えているか」というメタ的な視点を育めていない(今風に言えば、メタ認知ができていない)。

 困ったことに、カフェのオンライン会議では周囲に同僚がいないため、どれだけ周囲に迷惑をかけているか、気づける環境ではない。

 このような理由で、今日もどこかのカフェで、他人に知られると問題のある情報が「ダダ漏れ」になっている。私も注意した方が良いのかな、と思うものの、議論になって遅刻したら困るし、からまれても嫌なので、沈黙したままカフェを去る。

“鉄壁”の社内セキュリティ意味なし!人の口に戸は立てられない

 現在、多くの企業は情報セキュリティに多大な投資を行っている。

 まず、NDA(秘密保持契約)を仕入先や委託元と締結することが義務付けられている。次にVPN(仮想専用ネットワーク)の使用が徹底され、すべての社外アクセスがVPN経由で行われる。

 また、アクセスログの監視や操作の追跡も行われ、誰がいつ、どの情報にアクセスしたかを記録する体制が敷かれている。さらには、eラーニングと確認テストを通じて、職種や年次に応じた情報セキュリティの理解度を確認している。これらは企業が情報セキュリティに多大な費用と手間をかけて取り組んでいる証拠である。

 ところが、である。

 口から出た言葉にはパスワードもログも存在しない。文字通り人の口に戸は立てられない。だから、誰かが悪気なく発したたった一言が、誤解を招き、さらには風評リスクや法的問題、機密漏洩に発展することがある。どんなに細心の注意を払い、多額の投資をして、企業がセキュリティ対策をしていても、一巻の終わりである。

 そして、発言した本人は往々にして、その内容が「話してはいけないこと」だとは考えていない。このセキュリティ部門と現場の意識の乖離の大きさ、自覚なき漏洩こそ、現代の最も深刻なリスクである。