日々の生活の中で心がすり減っていく…。「しんどい」「もう無理かも」と思ったとき、そっと手に取ってほしいのが、『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著・藤田麗子訳)だ。本書は、自分のキャパ以上にがんばりすぎてしまう人に向けて、優しく語りかけてくれる言葉が詰まっている。今回は、精神科医さわ先生に、「がんばりすぎて自分を追いつめてしまうときに、ラクになる考え方」を伺った。(取材:ダイヤモンド社・林えり、構成・文:照宮遼子)

「自分は生きている意味がない」と思ったときは要注意
――何をしても元気が出ず、憂うつな気分を引きずってしまう。「もしかしたらうつ病など、何か精神的な病なのかもしれない」と思っても、精神科や心療内科にかかるのはハードルが高いと感じている人もいます。
精神科医さわ(以下、さわ):私がよくお伝えしているのは、「うつ病は誰にでも起こりうる病気だ」ということです。実際、うつ病は生涯で15人に1人が一度は経験すると言われています。私自身、精神科医ではありますが、「自分は絶対にうつ病にならない」とは思っていません。
――身近にある病気なんですね。
さわ:だからこそ、うつ病になったときには、「今までよくがんばったね。今は少し休もう」と、自分に優しい言葉をかけてあげてほしいです。うつ病は、心が発している「休みたい」というサイン。それをきちんと受けとめることが、回復へ向かうための第一歩になります。
――「こんなことで心が折れるなんて。自分は心が弱いのでは」と自分を責めてしまう人もいます。
さわ:そうですね。「こんなことでうつ病になるなんて情けない」とか、「自分には生きる価値がない」と感じてしまう。でも実は、それ自体がうつ病の症状のひとつでもあるんです。
「うまくできない自分」を受け入れる
――そういうとき、自分とどう向き合えばいいんでしょうか。
さわ:まずは、自分の状態をちゃんと認めること。それって、実はすごく勇気がいることなんですよね。
患者さんのなかにも、「うまくできない自分が許せない」「心が弱い自分はダメだ」と思い込んでいる人が少なくありません。でも、本当は、弱さは出していいし、見せてもいいものなんです。
――気づかないうちに、「もっとがんばらなきゃ」と自分を追い込んでしまう人もいますよね。
さわ:まじめな人ほど、自分を責めやすいんですよね。だからこそ、本書の「うまくやろうとするから悩みが増える」「うまくやろうとするから後悔する」(p.60)といった言葉が共感されるんだと思います。
「自己肯定感」とは、できる自分を認めることではなくて、できなくても「それが自分」と思えること。
弱さも含めて、自分を受け入れていくことが大切なんです。

どんな感情を抱いてもいい
――弱い自分を認めてあげることが大切なんですね。
さわ:はい。強さもあれば弱さもあって、苦しんだり揺れたりするからこそ、人間らしさがあるのだと思います。感情がなければロボットやAIと同じですよね。
詩人の相田みつをさんの「にんげんだもの」という言葉は、まさにその本質を表していると感じます。
どんな感情を抱いてもいいんです。泣いたって、怒ったって、感情を持つのは当然のことなんです。