SNSを見ていると、つい「あの人は自分よりもすごい」「自分だけがうまくいっていないのでは」と考えてしまい、自信を失いがちになる。『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著/藤田麗子訳)はそんな自己肯定感が下がり気味な読者に優しく寄り添う1冊だ。「1ページ目から涙がとまらなくなった」と共感を集める本書。今回は、本書を絶賛する精神科医・さわ先生に、本書の内容をふまえて「他人と比べてしまう人がラクになるヒント」を伺った。(取材:ダイヤモンド社・林えり、構成・文:照宮遼子)

「自分にとって居心地のよいこと」に集中する
――SNSばかり見ていると、「あの人は自分よりもすごい」など「他人と比べること」が生活の一部のようになってしまいます。自分と他人を比べてしまいやすい人は、どうすれば心穏やかに暮らせますか?
精神科医さわ(以下、さわ):比較するというのは、もともと群れの中で自分の立ち位置を把握するための生存戦略の一つで、人間にとって本能的な行動です。だから、「比べないようにしよう」と無理に意識すると、かえってしんどくなってしまうんですよね。
――たしかに、「比べちゃいけない」とわかっていても、結局比べている自分に気づいて嫌になりますね。
さわ:比べるところから離れて、「自分の心の居心地のよいこと」を意識するほうが大事です。

誰が正しい、間違っているなど「ジャッジしない」
さわ:そしてもう一つ、生きづらさを抜け出すポイントが「ジャッジしない」と自分で決めることです。
――ジャッジしないですか。たしかに気づかないうちに「私は正しい」「あの人が悪い」など、良い・悪いを決めようとすることもありますね。
さわ:はい。たとえば夫婦喧嘩のような身近な場面で、正しさをはっきりさせようとすると、かえってこじれてしまうことがあります。どうしても判断が必要なときは、法的な問題であれば裁判所が対応してくれます。そもそも、日常のなかで白黒をつけなければならない場面は、それほど多くないんです。
――たしかに、正しいかどうかにこだわりすぎると、生きること自体がしんどくなってしまう気がします。
さわ:日常の中で誰かをジャッジすることが習慣になると、それがそのまま自分への厳しさにもつながっていくんですよね。
また、他人をジャッジしてしまうときって、実は自分を責めている裏返しだったりもします。
自分に向ける厳しさを「優しさ」に変えて
――自分に向けていた厳しさを、無意識に他人にも向けてしまっているのかもしれませんね。
さわ:そうですね。私も子どもが不登校になったときに、「自分がダメな母親だからこの子は学校に行けないんだ」と思いつめたことがありました。親からも「こんなときに仕事なんてしている場合じゃないでしょ」と言われて、余計に苦しかったです。
――自分の不安と、周囲の言葉が重なると、いっそうしんどくなりますよね。
さわ:はい。でもそのとき、相談したカウンセラーさんと話をしていて、「良い、悪いをジャッジしなくていいんだ」と気づくことができました。いくら原因を探しても、結局はっきりとした正解なんて出ないんですよね。