野田 政治は「24時間働けますか」の世界だとか言うけど、それは嘘で、みんなガーガー寝てるし、ガンガン飲んでるし、ガンガン食べてるし、もういろいろなバカ話もしてるし、普通の人間なんですよ。ただ与えられた職務が、法律を作ることだから。そこを外さなければ、誰でもできる。
でも、私からすると、正義感が強すぎる人はちょっと大変かなと。なぜなら折れちゃうから。国会議員って、結局は日本人の集まりで、たとえれば日本に住む人のいいところと悪いところの集まりだから、そんなに理想通りにはいかない。
大切なのは多様な考えを
ひとつに織り上げること
長野 それ、面白い。政治家に向いている、向いてないって、やっぱりありますか。正義感が強すぎると、心折れてしまうというのはなぜなんでしょう?
野田 だって、自分の言うことが通らなかったら、ポキッてくるでしょう。そういうものじゃないんだと。自分の思いを貫くための場所じゃなくて、人の思いを貫くための場所だから。
辻元 それは大事な指摘。
野田 勉強しすぎると、自分の考えで固定化されてしまうからね。
辻元 私も最初に入ったときは、希望に燃えていてね。小さな政党だったし、正しいこと言ってやろう、なんて思っていたんだけどね。実際にはいろいろな考えの人がいる中で、自分と同じ考えの人で過半数取って、勢力をつければできるけれど、大体そうはならない。
利害調整というか、いかに多様な考えをひとつの織物のように作っていくかが大事だと気付かされた。ドレッシングなんかでも、お酢にサラダオイルやオリーブオイルを入れて、本来あまり混じり合わないものが、ブレンドの仕方によっては、すごく美味しいものになる。その技術が政治だと学んだのよ、国会の場にきて。自分の主張だけを、ガンガン言っていても、いいものはできないって。
この辺は、1年生議員のときに自社さ政権という与党にいたから、自民党の先輩たちから実践で教えてもらったことが多いなあ。加藤紘一さんとか山崎拓さん(注1)、野中広務さんとか。竹下登元総理(注2)にもね。それがあったから、立憲を立ち上げたときに「利害調整のカナメ」である国対委員長をやれたんだと思う。
(注2)竹下登。1924年生まれ。自民党・元衆議院議員。第74代内閣総理大臣。2000年政界引退、死去。