女性初の総理大臣候補として注目を集め、9月の自民党総裁選に出馬の意欲を見せていた野田聖子総務大臣。だが、7月後半から自身の関係するスキャンダルが相次いだこともあり、出馬に必要な20人の推薦人集めは大苦戦。総裁選への出馬を断念した。総裁選出馬を断念するまでの野田氏の動きと今後について、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞いた。(取材・文/清談社)

安倍、菅、古賀の各氏にも根回し
準備万端だったのだが…

自民党総裁選への不出馬を表明した野田聖子氏2015年に続いて今回も、自民党総裁選への出馬を断念した野田聖子氏。しかし、これで政治生命が終わり、というわけではなく、復活してくる可能性が高そうだ 写真:日刊現代/アフロ

 野田氏は、今回の総裁選について、どのような準備をしていたのか。鈴木氏が舞台裏を語る。

「6月の終わり頃、野田氏と話す機会があり、総裁選について尋ねると、『わたしは頑張るよ』と意欲を見せつつも、『だけど、推薦人がね…』と話していました。当時から推薦人集めには苦労しているようでしたね」(鈴木氏、以下同)

 野田氏は、安倍首相の無投票再選に終わった3年前の総裁選でも、公示ギリギリまで推薦人集めに奔走したものの、最終的に20人を集めることができず断念に追い込まれている。今回も、推薦人集めには苦労していたようだ。だが、鈴木氏によると、その一方で、出馬に向けた布石も着々と打っていたという。

「政局観のある野田氏は、6月の段階で、安倍首相と菅義偉官房長官、古賀誠元幹事長の3人に出馬の挨拶をしていたようです。安倍総理には仁義を切る必要があったからでしょうが、菅氏と古賀氏に挨拶したのは野田氏に思惑があったからでしょう」

 安倍首相を支える菅官房長官は、総裁選が安倍首相と石破茂元幹事長の一騎打ちの構図になることを懸念していたという。一騎打ちだと、どう転ぶか分からない上に、たとえ勝ってもそのあと深い溝を引きずり政権の不安定要素になる可能性もあるからだ。そうしたことから3人以上の複数の選挙戦も頭に描いていたという。そのため、菅氏は、第三の候補者として野田氏が出馬することもありと考えている、という情報が永田町には流れていた。一方の野田氏も「出馬に肯定的な菅氏が推薦人を貸してくれるのでは」と期待を寄せていたようである。

 また、3年前の総裁選の際に、推薦人集めで協力を受けた古賀氏に対しては、前回同様に、古賀氏が影響力を持つ岸田派の若手議員に推薦人になってほしい、との思いがあったようだ。