“天然に見えて、実は論理派”健太郎役の高橋文哉が語る「底抜けの明るさ」の演じ方【あんぱん】

健太郎はいつからメイコを
意識しはじめたのか?

 実際、大人の男性と若者の動きの違いをやって見せてくれた。細かく観察して、それを的確に再現する能力に長けているのだろう。感性だけに頼らず、技術力で勝負するプロフェッショナルだと感じる。高橋さんが様々な役が演じられる理由が少しわかった気がした。

 極めて論理的に役を組み立てている。メイコに思われても鈍くて全然気づかずにいた健太郎が、いつメイコを意識しはじめたのかという質問が出ると、「告白のシーンに至るまで徐々に感情が上がっていくだろうと思って考えていた」と言う。

 でも、「健太郎がじわじわ好きになっていったのか、瞬間、好きだと感じたのか、視聴者のみなさんが、それぞれ想像してくださればいいかなと思っています。

 僕のなかでは、あるときメイコを意識して、それからずっとメイコが心の片隅に居続けたのだろうなと思う瞬間があるのですが、そこでかすかな恋心を表現してしまうと、健太郎らしく見えなくなってしまう気がして、あえて出さないようにしました」

 健太郎をあざとく見えないようにしたいと思っていたという。演技の計算が見えると、あざとく見えることを心配したのだろう。おかげで、健太郎は天然で鈍いお人好しなのだろうと感じられた。

「結婚してからも健太郎は変わらないんです」

 嵩とは義理の兄弟になって、長い時間、友情を育んでいく。NHK局員として嵩に仕事を依頼もする。健太郎の嵩への感情はこう考えていた。

「学生時代からこんなに長く友人でいられるのはうらやましいです。途中から義理の兄弟になって関わりも変わるのですが。

 戦後は、シンプルに嵩の絵や詩が好きで、自分の番組を作るときに一緒に仕事したいという気持ちだと思います。戦後、いせたくや(大森元貴)と3人のシーンが増えて、たくちゃんと違うベクトルで嵩と関わっているように見せたいと思ったときに、そういう方向にしました」