実際、石綿は値段が安いうえに、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性などに優れ、長く伸びて加工もしやすく、摩擦にも強い。いいことずくめの性質を持っているようにしか思われておらず、高度成長期頃にはビルでもガンガン使用されていたし、消防士の耐火服などにも用いられていたのである。

 だが、目に見えないほどの細い繊維の集まりであったため、建築物解体時などには飛散したり空気中を漂いやすかったりで、これが人間の肺に入り込むと肺ガンや悪性中皮腫などを発症することも次第に明らかとなってきた。さらに厄介なことに、これは潜伏期が非常に長く、吸入してから平均40年前後で発病したりするのである。

 日本では1987(昭和62)年に吹きつけアスベストの危険が大きく報道され、文部省(当時)は全国的な実態調査を実施、撤去に対して補助金を出すなどの対策を行っている(この時配布された「吹きつけ石綿の判定方法」はのちに不完全なものであったことが判明している)。

 今も学校を初め各地で盛んに除去工事が行われているが、あのまま誰も知らずにいたら……と考えると、これも何だか結構怖い話である。

謎の甘味料や着色料に
得体の知れない添加物

 昭和中期頃までの食べ物には得体の知れない製品が多く、今になるとあれは一体何が入っていたのだろうと思えるようなものもたくさんあった。いつまで経っても腐らなかったり、着色料まみれだったりする食品もやたらとあって、製造年月日や生産・製造地が分からないのも当たり前だった。