「紫外線サイコー!」「アスベストはミラクル!」勘違いが招いた昭和の危うい日常にゾッとする…写真はイメージです Photo:PIXTA

昭和の時代に「体にいい」と信じられていた数々の常識。今となっては、“完全な勘違い”だったというものも少なくない。しかも、その根拠をたどると、思わず首をかしげたくなる話ばかりだ。日に焼けた肌は健康の証、アスベストは夢の素材、そんな思い込みが、いかに危うかったか。意外と怖い「昭和の健康信仰」を、改めて掘り下げる。※本稿は、葛城明彦『不適切な昭和』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。

日焼けは健康に良いと
世間は信じて疑わなかった

 現在でも日焼けサロンはあるし、日焼け愛好者も一部いるだろうが、昭和の頃は大半の人が日焼けをしたがっていた。「紫外線が有害」などという知識は誰も持っておらず、「日焼けは、すればするほど健康になる」と思い込んでいたのである。

 また、ルックス的にも「小麦色の肌」は女性の間で憧れとなり、1966(昭和41)年には前田美波里のポスター「太陽に愛されよう」(資生堂ビューティケイク)、1977(昭和52)年にはカネボウ化粧品サンケーキポスターで夏目雅子の「Oh!クッキーフェイス」(日焼けした女性の健康的な顔)が話題になったりしていた。

 海もプールも大きな公園も日光浴する人だらけで、サンオイルは飛ぶように売れていたし、「コーラを塗ると早く黒くなる」といった噂もあって、実際それを試す人もちらほらみかけられた(色素の関係で黒くなったりはするらしいが、肌には有害とのこと)。

 学校でも、夏休み前の最後の朝礼では、決まって校長先生が「また新学期、真っ黒になったみなさんと会えるのを楽しみにしています」と話していたし、「夏に日焼けしておくと、(皮膚が鍛えられて)冬になっても風邪を引かない」という迷信も、世間一般では普通に信じられていたのである。